所用である街を訪れた際、「ついでに…」と立ち寄ったコーヒー店で素敵な食器が出てきた。聞けば、近くの店で売っているという。言われるがままに行くと、その店でも近所の観光スポットをお勧めされ、あれよあれよと街中を歩き回ることになった。
その街で民宿を営む店主は、街の盛り上がりに必要なのは「目的地になる店」と「店同士が紹介し合える関係」と話す。目的地になる店だけでは街の印象は〝点〟で終わってしまう。そこから他の店に送客できれば〝点〟がつながり、街に「〝面〟としての魅力ができる」。
現にその街ではどの店に足を踏み入れても、次につながるヒントが張り巡らされていた。壁の貼り紙から、置かれた雑誌、飲食を提供する器、店主との会話まで。身を預けて一日歩き回ると、見知らぬ街にも愛着が生まれてくる。
推し活の遠征など、目的一つで見知らぬ街に行く人も増えている。きっかけは何にせよ「ついでに…」をいくつ作れるか。散りばめられた街の魅力をつないでいくことが肝要だ。
(桃)