《視点》和装の海外縫製の危機

2021/09/01 06:23 更新


 きものの縫製やアフターケアを担う加工業はコロナ禍により、経営上の重大な局面を迎えている。縫製主力の企業は小売店で新反が購入されて初めて加工を受注し売り上げがつくれる。しかし、緊急事態宣言以降は店が開けられない期間があり、密を避けるため催事販売にも人を集めにくいなど販売反数自体の落ち込みが大きく響いている。

 加えて、和装の海外縫製のほとんどを担う縫製工場はベトナムに集中しているが、現地では昨年来、ホーチミン、ハノイ、ダナンなどの主要都市で段階的なロックダウン(都市封鎖)を伴うかなり厳しい行動制限が実施されている。縫製工場も多くが隔離・閉鎖を余儀なくされるなか、一部の工場では少数の従業員が工場に泊まり込んで縫製を行うなどギリギリの対応をしている。工場の運営費や輸送費など経費も増大しているが、縫製のキャパ自体が極端に縮小しているため、すでに納期にも影響が出ているという。

 ロックダウン(都市封鎖)の解除時期や、解除後に以前の水準の従業員が確保できるかなどの不透明さに加え、縫製に付随する加工の受注減、着用機会の減少からアフターケアにも影響が出ているが、動きにくい今こそウェブやSNSを活用した顧客獲得やお直し需要の喚起、設備や技術を生かした異分野への進出など今後に生かせる取り組みが重要だ。

(昌)



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