国内ではウェルネス志向の高まりを受け、衣料で健康にアプローチする動きが目立つ。ウェアラブル事業もヘルスケアやスポーツなどへの提案が相次ぐが、苦戦している企業が多い。原因は、消費者目線の欠落かもしれない。
あるメーカーに動作検知のウェアラブルサービスを取材した時のこと。競合品に対する優位性を尋ねると、最初に仕入れ事業者の負担軽減が挙がった。メーカーは事業者に納入するが、消費者に選ばれなければビジネスは成立しない。データを取得する非接触センサーが増える今、消費者が同社のセンシングウェアを選ぶだけの魅力は伝わってこなかった。
各社が競うデータの精度の高さも、用途に見合うか疑問が残る。同僚は、脈拍が計測できる中国製の約1万円の時計を持っている。「精度は不明だが、日常生活で体調を知る目安になれば十分」と話す。日本製品は、精巧さを誇る半面、過剰スペックになりがちだ。結果的に価格も割高になり、思うように売れない。マーケットインと改めて言うまでもないが、メーカーは消費者心理の理解が必要だ。
(稜)