楽天ファッションウィーク東京を振り返って、気になることが一つある。ショーやインスタレーションで目立っているミュージシャンの生ライブだ。
歴史的にファッションと音楽はつながったカルチャーであるし、ショーのだいご味は、様々な人の手が加わって、音楽、メイク、舞台演出をハーモナイズさせたクリエイションだ。それらが共鳴していれば、デザイナーのイメージが見えて服に見応えが増し、ときにはリラックスムードに包まれ、着てみたい衝動に駆られることもある。
ただ、今回、残念に感じたのは、生ライブに服の存在が負けてしまっているケース。耳に入ってくる音の響きは、目で見る情報より強く伝わるし、融合するバランスをわきまえないと、デザインがくすんで見えて記憶に残らない。SNSでの動画配信が日常化する中、人気アーティストとの協業で拡散効果を狙っているのかと疑いたくなる。インパクトを出したいのはわかるが、服の価値が伝わる協業なのか慎重に考えて欲しい。
(渉)