東洋紡糸工業は23~24年秋冬に向け、主力のカシミヤが好調だ。長年のカシミヤ紡績で培ってきた技術を基に、外観や風合いのバリエーションを広げ、高まる需要を捉える。
この数シーズンはウールが中心だったが、「より良い物を作って売ろうというアパレルが増えている」ことを背景に、カシミヤの引き合いが活発になっているという。看板商品のベビーカシミヤは、繊度が13.5ミクロンから14ミクロンと非常に細く、肌触りの良さはもちろん、毛羽が絡みづらく毛玉になりにくいという特徴が、良い服を長く着たい消費者志向にも合う。1年に20トンしか生産されない希少素材だが、採毛に最も適した中国内モンゴル自治区東部から仕入れ、特別に整毛されたカシミヤ原毛の供給をほぼ独占的に受けているため、高品質な糸を安定して販売できる。
独自の加工や異素材混紡による豊富な品揃えも強みだ。「イーフィール」は、各紡績工程で繊維の損傷を最小限にすることで、鮮やかな発色を可能にした。色あせしにくく、耐候堅牢度は3級をクリアしている。
「サプナ」は、毛が長く出るよう設計した糸と、特殊な洗い加工を組み合わせることで、ファーのようにふわふわに仕上がる。一般的な起毛加工と異なり、毛が抜けにくい点も評価されている。
「スプーマ」は、カシミヤとシルクの混紡糸。カシミヤ100%より価格を抑えながら、優美な光沢や膨らみによる上質な雰囲気が得られるとして好評だ。カシミヤ70%・シルク30%のスプーマ73と半々の混率のスプーマ55の2品番がある。スプーマ55は、対シルクの特殊プロテインコーティング加工「マユカ」で膨らみを増し、手洗いできるようにした。