東レ「ヒトエ」 作業者見守りで需要伸びる

2021/05/13 06:28 更新


 東レのウェアラブルデバイス「ヒトエ」の需要が伸びている。特に夏場は厳しい暑さが続き、作業者には体調不良になる健康リスクがつきまとう。そのリスクを未然に防ぐツールとして、着用者の生体情報を連続計測して体調をモニタリングできるヒトエに関心が高まっている。

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 ヒトエは導電性高分子をナノファイバーニットに含侵させた機能素材で、体の微弱な電気信号を検知できる。シャツやベルトの内側に付け、身に着けると高精度な生体情報の計測が可能。専用のアプリケーションと組み合わせると、平常時と異なる体調の変化が見られた時に管理者などへ通知される。

 問い合わせが増えているのは「従業員の暑さ対策のツールとして使えないか」という内容だ。昨年はコロナ禍だったが製造業、建設業などから「問い合わせが毎日あった」という。今年も「暑くなるにつれて問い合わせは増えていくはず」と見ている。

 4月にはさらに実用的な新製品を加えた。これまでのシャツはコンプレッションタイプで、ノースリーブのプルオーバーだったが、新製品はファスナーを使った前開きの半袖タイプ。着脱しやすい仕様にした。全体を締め付けるのではなく、生体情報の計測に必要な体の部位だけ適度に着圧する設計で着用時の圧迫感を和らげた。改良背景には「着にくい、脱ぎづらい、夏の着用は不快」というユーザーの声があった。「健康リスクが高まる夏こそ着用してほしい」という思いで開発した。

 ヒトエを使ったサービスは16年にスタート。当初は大人数の見守りを想定してクラウドを活用したが、様々な現場のニーズに対し、少人数の職場単位でも導入しやすいよう「ヒトエみまもりアプリ」を18年にリリース。よりシンプルで手軽に体調変化をモニタリングできるサービスへ移行し、活用範囲が広がった。シャツ1枚当たり1万円、アプリは無償提供で「導入費用がわかりやすく、ソリューションとしては導入しやすいコストではないか」という。

 ヒトエの技術は医療用途で心電波形を計測するために応用されていることも強みで、「サービスへの信頼感につながっている」という。気軽に心電波形を計測し、予防の観点で健康リスクの早期発見に役立つツールとしても訴求していきたい考え。

4月に出した新しいシャツ。既存品はノースリーブだが半袖にし、わき汗の処理にも効果的


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