東京で元気な個性派セレクト ニッチ望む客引き寄せる

2019/12/30 06:29 更新


 都心部の低中価格帯で勝負する個性派セレクトショップで、元気よく売り上げを伸ばすところが出てきた。共通点は、自店にとっての〝ブルーオーシャン〟を見つけたこと。経営視点は「他店がやることはやらず、自店だけで売れる商品を見いだす」だ。4本袖のトップをオリジナルで作ったり、土産雑貨や中古きもので海外客を急増させたりしながら、「狭い枠にとらわれず、かつニッチを深めれば大きな伸び代が存在する」という。東京ではこの価格帯の店が減っているが、客の要望を押さえたコンテンツを見抜ければ、勝機はある。

(疋田優)

4本袖のトップ

 池袋のサンシャインシティの中にあるアルタ地下1階。ここに店を構える「シュンカイ」(セブンルームプロパティー)は、チェーン店が多い施設内で異色の存在だ。売り場面積約100平方メートルのレディスセレクトショップだが、来店客は30代を軸に、高校生から70代まで幅広く、平日でも多数の女性客が来店して複数点を購入していく。「スカラー」など仕入れブランドも売れるが、ここ数年は土肥春海代表が企画するオリジナルウェア「ハルプラス」が好評で、売り上げの4割を占める。

見た目は日常着、一つひとつはクセのある商品が揃う「シュンカイ」

 オリジナル服は、4本袖のニットトップやアウター、目玉プリントのニットトップなど「クセのあるデザイン」。特徴は「トレンドが入っていて」「日常で着られて可愛く」「他店にはない」という。国内の取引先や韓国で小ロットで生産し、最短3週間で店頭に出し、SNSで発信する。1型20枚程度で、すぐなくなることを客も知っているため、取り置きが頻繁で、多くは数時間で完売する。他店とかぶる商品が増えるのを危険サインとし、素早く品揃えを見直せるのも強みだ。

 トレンドを意識しつつ「次から次へデザインを変える。ノーコンセプトだから、店が生きている」と土肥さんは笑う。客数はここ数年変わらないが、客単価は15%増加して1万5000円。

 販売員は8人も在籍し、長く勤め、戻ってくる場合も多い。接客では客が話したいことを聞き、会話し、最後に数分服を選んであげる形。客とのトークに花が咲き、レジには購入商品がどんどん山積みになる。今期の売上高は約1億8000万円を見込み、来期はオリジナルをさらに強化し、2億円を目指す。

上野のカオスに

 上野・アメ横の「マガジンズ」(千万喜)は昨年から、ユニセックスとインバウンド(訪日外国人)向け商材を強化し、今秋冬の売り上げは前年同期比約40%も伸ばしている。

 マガジンズは94年の立ち上げで古着・新品ミックスを扱う、上野の商店街のメンズセレクト店だ。2層で本店の上野広小路店は売り上げが高かったが、ここ最近は低価格メンズカジュアルの不調で苦戦していた。

土産・雑貨・古着へ転換して売れ筋が増えた「マガジンズ」

 そんな中で、昨年末からMDを大きく刷新した。1階の入り口脇コーナーをマグネットや靴下などインバウンド向け土産の集積に変え、客が多い入り口からレジまでをバッグや国産革ベルト、腕時計などに集中した。2階は海外有力ブランド古着のコーナーを復活する半面で、中古の羽織りきものも新たに扱ったところ、夏から売り上げが上昇し、3~11月は約30%増と急伸した。

 インバウンド比率が7割(昨年5割)に上昇する一方、日本人顧客は2階に直行してブランド古着を購入する。1階で低価格品が増えたため客単価は6000円と微増だが、客数は大幅に増えた。

 「以前までのメンズ服屋では、通行人のニーズに合っていなかった。土産、雑貨、古着、きものというニッチに転向し、〝上野のカオス的な存在〟になり、自店だけの売れ筋ができた」と礒貝章平マガジンズ本部長は話す。特に、今までの成功体験だったメンズカジュアルという狭い枠組みを振り払えたことが成果という。

 服も物産展に近い目線で仕入れる。和柄シャツやスカジャンを、ふらりと入ってくる海外客にもすぐに分かるほど並べる。「土産品的な服を海外客は探している。それを中途半端でなく、深く豊富に揃えた」。中古きものはその典型で、他店がなかなか扱えない商材を充実したことで、欧米人が喜んで買っていく。今期は年商2億6000万円の予定。来期は海外ECを立ち上げて3億円を目指す。

(繊研新聞本紙19年12月10日付)



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