TBMの「ライメックス」 石灰石で新時代の環境対応

2020/01/03 06:30 更新


《FBとCSR》TBMの独自素材「ライメックス」 石灰石で新時代の環境対応 プラスチックや紙の代替として

 TBM(東京、山﨑敦義代表取締役CEO=最高経営責任者)は、自社で開発・製造・販売する石灰石が主原料のオリジナル素材「LIMEX」(ライメックス)を、プラスチックや紙の代替として多用途で提案している。サステイナビリティー(持続可能性)を背景にファッション業界でプラスチックごみ削減への関心が高まるなか、ライメックス製のショッピング袋の採用も広がりつつある。7月にはレジ袋有料化も予定され、小売店へ積極的に訴求したい考えだ。

(石井久美子)

◇豊富な埋蔵量

 TBMの設立は11年。16年に名刺をスタートし、17年から紙代替のシートの開発を強化、現在は「吉野家」「ガスト」など大手飲食チェーンのメニュー表に採用されている。18年以降はプラスチック代替としての提案も強めている。14年に国内特許を取得し、中米欧を含む30カ国以上で登録済みとしている。

 石灰石は「日本でも100%自給自足でき、世界各地の埋蔵量も豊富」(笹木隆之コーポレート・コミュニケーション本部兼社長室執行役員CMO=最高マーケティング責任者)な原料という。石灰石を使う素材は海外にもあるが、ライメックスは日本の技術で印刷適性など品質面を高めた。石は固そうなイメージだが、名刺もしなやかで違和感はない。石灰石50%以上と石油由来樹脂を一部使っているが、石灰石と植物由来樹脂でできた袋「バイオライメックスバッグ」も開発している。

 ライメックスの用途はショッピング袋や店舗の電飾シート、商品のタグ、ハンガー、名刺など幅広い。ショッピング袋は「スピンズ」やデイトナ・インターナショナルの新業態「ファーストハンド」で採用され、ファーストハンドではスマートフォンケースなどで商品化もされた。

 新たに、はるやま商事の「はるやま」のショッピング袋に、バイオライメックスバッグが採用された。

ファッション業界でもショッピング袋に使う企業が出始めた

◇効率的に再資源へ

 環境配慮型の素材で気になるのがコスト面。しかし、「物性は従来使用していた素材のまま、コストは極力上げない」方針だ。例えばショッピング袋の場合は現在、通常のライメックスがプラスチックの1.3~2倍、バイオライメックスが2~2.5倍というコスト差があるが、「プラスチックからの切り替えでよく選ばれる紙製バッグよりは安く作れる」という。紙に比べて耐水性や配送時のかさばりにくさなどのメリットもある。企業からの問い合わせも多い。原料の石灰石自体は安価なため、量産化が進めばコストはさらに下がるとみている。

プラスチック代替の様々な品目に対応

 メニュー表や名刺は、東北産の石灰石を使って宮城県白石市の自社工場で粉末からシートにし、協力工場での加工工程を経て完成品となる。袋物はペレットから作るため製造工程が異なり、一部は海外生産も始まっているという。無駄や負荷の少ない生産体制を目指しており、既存のプラスチック製品用の成型機での製造が可能だ。石灰石は熱劣化が少なく、使用済みの製品を回収して効率的にペレットとして再資源化できるのも特徴という。

 より繊維業界に近いところでは、不織布タイプの開発に着手、20年中に発表する予定だ。加えて、PLA(ポリ乳酸)素材「Plax」(プラックス)を扱うグループ会社のバイオワークスでは20年春に向け、アパレルやタオルなどの繊維製品用に高機能PLA繊維の開発も進めている。バイオワークスが特許を持つバイオ由来の改質剤により耐熱性や耐久性などの弱点を改善し、既存のPLAとも差別化したものにする考えだ。

 TBMはライメックスの生産量拡大など体制強化に向け、大日本製紙、凸版印刷、三洋化成工業、伊藤忠商事などから資金調達し、現在の資本金は107億円。20年末には宮城県多賀城市に第2工場が完工予定。今後は販売体制も強化する。

グループ会社ではPLA素材「プラックス」を提案

(繊研新聞本紙19年11月12日付)



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