高島屋は国産デニムがテーマの体験型イベント「デニムスクランブル」で、三備地区の産地の認知拡大・活性化を支援している。24年3月に新宿店で初開催し、産地企業が実際に消費者の前で製品を縫う様子を見せるなどして、物作りの技術や魅力をアピールした。第2回を新宿店で3月26日~4月1日に開くほか、好評を受けて4月16~21日に大阪店でも開催する。
第1回には10社が参加
同社は循環型の物作りプロジェクト「デパート・デ・ループ」で、客から店頭でデニム製品を回収し、国内でリサイクルして製品化する取り組みをしている。これに共感した三備地区の産地から、消費者への認知拡大の協力を求める声が上がり、イベントの開催に至った。
第1回には10社が参加した。メインの企画は、工場で実際に使っているミシンを持ち込み、その場でデニム地のバッグを縫い上げる実演販売だった。普段は目にすることがない職人の技を見られるとあって、多くの客でにぎわった。
文化服装学院の学生が、提供されたデニムを使ってデザインから縫製まで手掛けた一点物を販売する企画や、デパート・デ・ループで協業している、本澤裕治ドクターデニムホンザワ社長らによる講演会も好評だった。売り上げ予算を達成するなど、手応えは大きかったという。
東西に取り組み広げる
第2回は規模を拡大する。企画を担当する高島屋の白井七海さんは「イベントを通して、三備地区の国産デニムの魅力を再確認した。大阪でも開催し、より多くの人に知ってもらいたい」と話す。
前回好評だったミシンを使った実演は、バッグだけでなくジーンズを縫っている様子も見せる。販売する参加企業のブランド数を増やすことで、物作りの技術だけでなく製品そのもの魅力の訴求も強める考えだ。リメイクアイテムの販売やエイジングサンプルの展示を強化し、長く着られてリサイクルできる、ジーンズのサステイナブルな面をアピールする。
専門学校と組んだ企画は、新たに大阪文化服装学院の学生も加えて拡大する。今回は本澤社長が三備地区の企業の特徴や強みなどについて講義をし、それを受けて学生がデニムを使った服をデザインした。それらを厳選した物を、産地企業が実際に製品に仕立てて展示するほか、ファッションショーも開く。
白井さんは「一本の国産ジーンズができるまでのストーリーを伝え、より商品の価値を高められるようなイベントにしたい」と話す。

日本人に日本のデニムの魅力を伝えたい
本澤社長の話
今回は大阪でトークショーを開き、国産デニムの素晴らしさについて語るつもりです。ジャパンデニムは海外ではラグジュアリー製品として知られています。むしろ、日本での認知度が低すぎる。日本人が日本のデニムの魅力に気がついていないのは寂しいことです。イベントを通して、国内の人にもっと三備地区の物作りについて知ってもらえればと考えています。
消費者向けのイベントですが、ファッション業界で働く方も、ぜひ訪れてほしいです。職人が実際に工場で使っているミシンを動かす様子を、東京と大阪にいながら見られるのは、またとないチャンスです。〝スクランブル〟の名の通り、工場、メーカー、消費者、小売業が混ぜこぜになって交流を深めてもらいたい。専門学生が参加しているのも重要なポイントです。国内産地は規模縮小、高齢化が続いています。産地の物作りにじかに触れることで触発されて、次世代のジャパンデニムを担う志を持つ人材が生まれてくれればと願います。