【店長に役立つページ】ローカル有力専門店の店作り㊦

2019/12/08 06:29 更新


【店長に役立つページ】ローカル有力専門店の店作り 裁量大きく、多様なスタイルで

 ローカルに地盤を持ち複数店舗を運営するレディス、メンズ店にフォーカスを当て、店長さんの接客手法やスタッフ教育を取材した。店舗運営の自由度と、それを生かすための創意工夫が光る。

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【関西】「ロフトマンコープ」梅田店長 田中充さん

スタッフの個性を十分生かす

「スタッフとの対話を重視し、やりがいや目標を与えたり自主性も大事にしている」と田中さん

 ロフトマンコープ梅田は、京都にある4店を集約した旗艦店。主力のメンズだけでなく、レディスやキッズまでを品揃えしている。本物志向のお客が多く、学生から大人まで幅広い年代が来店する。田中店長は、「スタッフはそれぞれの個性を発揮して接客を楽しむべき。そうでないと店の魅力も十分には伝わらない」と考えている。スタッフの適性を見極め、みんなが生き生きと仕事できる環境を整えることを最も重視している。

 ロフトマンには接客マニュアルがなく、社内ルールによる縛りが少ない。個人に裁量や権限がある程度与えられるわけだが、田中さんはそのままスタッフを野放しにはしない。それぞれの向き不向きを考慮した役割分担をし、「やりがいや目標を持たせる」ことを欠かさない。さらに、スタッフの自主性を育むため、「現場から提案があればなるべく実現し、そのための業務も大半を提案者に任せる」。

 接客はマニュアルがないので、それぞれが個性豊かなスタイルを持つ。その中で重視しているのは、「提案するモノの魅力をどれだけリアルに伝えられるか」だ。品揃えはオリジナル商品が全くなく、どこでも買える物がほとんど。その分、踏み込んだ提案を実現するために、バイヤーと同行する形で店頭スタッフも展示会に足を運び、商品の付加価値、ブランドの魅力などを独自に見つけ出し、みんなとも共有する。

 集客については、ルールという縛りが少ないこともあり、スタッフが個人でSNSを積極活用している。フォロワー数は2000人超が複数、そして1万人以上のスタッフもいるほどだ。一方で、扱いブランドのイベントも意図的になるべく多く仕掛ける。「毎回イベントを目がけて来てくれる人もいるし、新規客の獲得にもつながる」と言う。

【九州】「グレディブリリアン」ソラリアプラザ店店長 豊福梓歩さん

日々のトレーニングで期待に応える

人と話すことが好きで「私に会いに来て下さい」と笑顔で話す豊福さん

 ソラリアプラザ店の店長になって3年。ファッションビルのため、買い回り客も多く、顧客よりふり客の比率が高いのが特徴だ。来店客は20~30代が中心だが、50~60代まで幅広い客層が訪れるため、スタッフ全員で日々トレーニングを重ねているアプローチやコーディネートのバリエーションで、「接客力は他店に負けない」という。

 多様なお客に対し「居心地の良い空間、また来店したくなる雰囲気を作る」ことを心掛けている。

 来店時の行動をしっかり観察。例えば何げなく商品を見ているお客にはフリートークで和み、ニーズを把握していく。タグを見ているお客には表示内容だけでは分かりにくい品質や価値、シルエット特徴などからアプローチ。ファッション感度の高い場合は、初めからコーディネートを見せるなど工夫。また、ジャケットやボトムなどアイテムを一つ決め、カジュアルやきれいめなど多様なコーディネートを事前にトレーニング。店頭商品は試着も必須で、丈感やシルエットなどを確認し、実際に着てみた感想などを交えてよりイメージが伝わるようにしている。何度も試着するのを嫌うお客も多く、1、2回の試着で商品への理解が深まるように努めている。

 ニーズや悩みに応えることがリピーターにつながる。社内の店長同士でも月1回の会議でコーディネートなどの情報交換を行い、トレーニングに生かしている。豊福さんは小柄な体形で、「同じようにサイズに悩んでいるお客様の悩み解消を手伝い、親近感を持ってもらえる」。スタッフが作るコーディネートも参考になる。それぞれが特徴や感性を生かし、スタッフが楽しく仕事ができる雰囲気を作り、「お客様の期待に応え、信頼されたときにうれしさに変わる」という。

《バックルーム》

  全国チェーン店とは異なり、「接客マニュアルがない」「バイイングが店に任されている」など、各店の個性を重視した体制が印象的だった。スタッフ教育に関しても、本人の自主性やその人のスタイルを引き出せるような指導を行っている。スタッフの数だけ、入店客への接客提案のバリエーションを増やすことにもつながる。

 一方で、小売業としての基本はきっちり押さえている。テイストや着用シーンに応じて様々なパターンのコーディネート案を準備しておく、商品価値が伝わりやすいVMDや接客フレーズを磨くなど、顧客目線の日々の工夫が個性と共感のある店を作っている。

(繊研新聞19年10月28日付)



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