グローバルスポーツ大手の競争優位は、どこにあるのか。仏大手銀行ソシエテ・ジェネラルの株式調査・仲介部門バーンスタインが、それを探る検証プロジェクトを行った。靴作りの経験を持たないアナリストがデザイナーと組み、ポルトガルのメーカーでスニーカーを生産した。現地報道によると、企画から4カ月足らずで500足を完成させ、工場出荷時の価格は1足50ユーロ未満。同社は品質も大手ブランド品と遜色ないとする。
狙いは投資仮説の検証だ。企画や調達、生産の参入障壁が下がり、グローバルスポーツ大手が享受してきた規模の優位性が薄れているのではないか――というものだ。市場では「ナイキ」が立て直しの途上にあり、「プーマ」の26年4~6月期売上高は為替影響を除き9.4%減。一方、「アシックス」の同年上期売上高は32.7%増となった。「ホカ」や「オン」といった後発ブランドも市場を広げてきた。「アディダス」も4~6月期売上高が為替影響を除き14%増となり、四半期最高を更新した。規模だけで各社の明暗を説明することはできない。
このプロジェクトが示したのは、無名の組織でも短期間に一定品質の商品を作れるということだ。ただし500足は無料配布し、価格を付けて販売したわけではない。作れることと、消費者に選ばれ定価で売り切ることは別だ。
製造の壁が低くなるほど、競争力の重心は、独自の機能や専門性、商品投入の速さ、さらに卸売りや直営店、コミュニティーを通じた顧客との接点へ移る。500足だけで、グローバル大手の優位性が失われたとは結論づけられない。それでもこの試みは、生産の参入障壁が下がるなか、ブランドの規模を投資判断上の強みとみなし続けて良いのかを問い掛けている。
(パリ=松井孝予通信員)