ブランド愛の伝道師 キャリアと共に育んだ信頼と自信

2019/12/21 06:29 更新


【センケンコミュニティー】ブランド愛の伝道師 キャリアと共に育んだ信頼と自信

 今回は、自社で販売する製品をこよなく愛する皆さんを紹介する。皆、ブランドや製品に対する深い知識と愛情を持ち、社内外に発信する伝道師的な存在として、社内でも一目置かれる存在だ。その根底には、自らのキャリアの歩みと共に育まれていった、物作りやクリエイションに対する揺るぎない信頼と自信がある。

◆ファミリア神戸本店スタッフ 古川祐子さん

物作りの情熱語り継ぐ

「物作りとお客様の橋渡しになれたら」と古川さん

 昨年9月に移転オープンしたファミリア神戸本店では、ファミリアの物作りに対する思いや、創作活動の楽しさを伝えるワークショップを定期的に開催している。スタッフの一人である古川祐子さんは、この企画の要となる存在だ。長年、物作りに携わり、創業者の思いも知る数少ない販売員で、語られるストーリーに魅了され、古川さんを指名するママも多い。

店頭での実演で使用したものを大切に持っている。お客の反応を見ながら即興で針を刺す

 90年に入社して意匠課に配属。デザイナーアシスタントの仕事を25年務めた。入社当初の直属の上司が、創業者の一人である田村えつ子氏だった。サンプル品を持ち寄る商品会議で、古川さんは襟の刺繍を担当。サンプルだからと、裏側を糸を渡らせて刺繍したのを、田村氏は見逃さなかった。たゆんだ糸で、子供の小さな指が挟まってしまうと注意を受けた。「お母さん目線、子供のための物作りを命がけでやっているという言葉に衝撃を受け、自分の道しるべになっている」と振り返る。代表アイテムのレッスンバッグで50年以上手芸を担当した藤井茂美氏のアシスタントも務め、物作りに対する姿勢を肌で感じることが出来た。

デザイナーの考えをもとに指示書を作る仕事などを担った

 店頭に立つことになり、新たな出会いが生まれている。将来ファミリアに入社したいと、来店する度に自作のノートにメモをとる女の子や、古川さんが実演するスモッキング刺繍に見入る男の子。古川さんは、培った知見やエピソードを交えながら、彩り豊かにブランド、商品の魅力を伝える。

 直接お客と接することで得られる感動はたまらなく、「自分の人生の糧になっている」と目を輝かせる。来年は創業70周年。これまでのように「物作りとお客様の橋渡し」を担いながら、本社のスタッフにも同様のエピソードを伝えられたらと話す。

入社当初に渡された裁縫道具を大事に使い続けてきた

◆東京ソワール物流部・検査グループ課長 須山和恵さん

検品作業もフォーマルウェアで

エレガントな姿で作業する須山さん

 ここは東京ソワール物流倉庫。フォーマルウェアをまとった一際エレガントな姿で検品作業を進めているのが須山さんだ。日々、自社のフォーマルアイテムを身に着けて勤務しており、倉庫を訪れた本社スタッフ間でも「今日もすてきだった」と、話題にのぼる存在だ。

 須山さんは1986年の入社から検査グループに配属され34年目。創業当初から歴史ある検査グループは、高品質を誇る同社製品が消費者の手に渡る前に隅々までチェックする〝最後の砦〟だ。「お客様の厳しい要求に応えなければならない分、責任も重いですが、やりがいのある仕事です」と話す。

 そんな須山さんが改めて自社製品に魅了されるきっかけとなったのが、5年前に創業45周年を祝して開かれたパーティー。フォーマルがドレスコードとなった同会に備え、休み時間に似合いそうな商品を探して倉庫内をさまようのが日課に。その日課はパーティー後も続き、「気に入った製品があるとつい我慢できずに」と、毎月コレクションが増え続けている。中でもお気に入りのミセス向け「ソワールドルチェ」を着ると、「ストレスが無くなり、気持ちが落ち着きます」と語る。

きっかけとなった45周年のフォーマルパーティ―

 製品の魅力について「品格があり、着た人の個性を引き出し、一番美しく見せてくれます」と須山さん。襟の形もフリルからショールまで多様に揃い、「必ず似合うものが見つかります」。何より一番の自慢は、やはり品質だ。「縫製工場さんと長年共に歩んで来ましたので、自信があります」とほほ笑む。

◆オーダースーツSADA 佐田展隆社長

スーツで過酷な環境に挑む

北アルプス縦走に成功

 自社製オーダースーツと革靴というスタイルでの北アルプス縦走やスキージャンプなど過酷な環境に挑むのは、オーダースーツSADAの佐田展隆社長(45)。自社製品の耐久性と運動性の高さを自らの体験で実証した動画を発信することで、「堅苦しい」「窮屈」などビジネススーツのマイナスイメージを打破するのが最大の目的だ。

 佐田社長の取り組みは13年からスタート。社内で動画によるマーケティングの内容を話し合っていた時に、「社長の趣味の登山で自社製品をアピールしたら面白いのでは」という社員からの声がきっかけとなった。第1回目には富士山が世界遺産になったことを記念し、富士山登頂にチャレンジした。その後も大学時代スキー部で鍛えた体力を生かし、雪山でのスキー滑降、東京マラソンの完走など毎年1回ペースで過酷な挑戦を繰り返している。その勇姿は無料動画共有サイト「ユーチューブ」で見ることができる。スキージャンプの動画は再生回数5万を超えた。こうした取り組みはテレビ東京の「カンブリア宮殿」でも放送され、大きな話題となった。

スキージャンプに挑戦した佐田社長

 スーツ姿でも激しい運動に耐えられるのは「オーダーメイドによって自分の体にフィットしたものを着用しているので、スーツに変な負荷がかからないから」と強調する。加えて、ストレッチ素材ではなく、あえてイタリアの生地メーカーのウールを使っている。スーツ離れが叫ばれる今、オーダースーツの良さをアピールし続ける佐田社長の挑戦から目が離せない。

◆「記憶アッシュ・ペー・フランス」スタッフ 古田絵里さん

「ウッター」の魅力追いかけ20年

ウッターは店舗分のバイイングも担当する古田さん

 古田さんは、アッシュ・ペー・フランスで長く販売を続けるアクセサリーブランド「ウッターズ&ヘンドリックス」(以下ウッター)のコレクターだ。ベルギー出身の女性デュオが手掛けるウッターのアクセサリーを最初に購入したのは、まだ学生の頃。その後、2000年8月の入社以来魅力に深くはまり、毎シーズン複数点購入し続けてきた。「全点数は数えたことはありませんが、総重量は6キロあります」。勤務する店でも日々ウッターのアクセサリーを身に着けて接客。顧客にはブランドのファンも多いため、「来店されるお客様に合わせて、時間差でつけるアイテムを変え、会話のきっかけにしています」。

 その魅力について、「常に期待以上のコレクションを出し、追いかけても追いつけない。20年近くファンでいても、飽き足らないという点が一番です」という。シーズンごとにテーマがあり、手に入れたアイテムを眺めていると、一つひとつ、背景の物語が思い出される楽しみもある。

コレクションの一部

 ウッターのアントワープ店は2度訪問している。現地の美術館で学芸員に「あなたのイヤリング、ウッターの新作じゃない?」と声をかけられ、「それだけ皆に理解され、親しまれているんだと思いました」と話す。

 古田さんのウッター愛はデザイナーたちにも伝わる事となり、創立25周年のブックには古田さんの写真もコラージュされ、今年迎えた35周年には、公式サイト上にコレクターとしてインタビューが掲載された。なお、アニバーサリーを記念し、アントワープのダイヤモンド美術館ではウッターの展覧会が開催中。古田さんも「1月に訪問予定です」と、3度目の渡航を心待ちにしている。

(繊研新聞本紙19年12月6日付)



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