無人の古着専門店「セルフルギ」が注目されている。9月初旬、東京・吉祥寺に3店目となる路面店をオープンした。出店したのはAVEND(アベンド、東京、南雲宏樹代表)で、1号店を東京・池袋に路面店で、2号店を東京・昭島のSC、ザ・ビッグ昭島店にそれぞれ出店し、今後、直営やFCで多店舗化を進める。
セルフルギを立ち上げたのは「コロナ下で非対面・非接触で、安心して買い物をしてもらえることや、衣料品の廃棄削減などのサステイナブル(持続可能な)ファッションの実現、人件費を抑えるために無人店舗にする一方、盗難防止の仕組みなどが整った」(南雲代表)ことが背景にある。共同創業者の一人が副業でリサイクル事業を行っていたことから古着の仕入れルートや古着業界とのつながりがあったことも土台になった。
多数の仕入れ先と提携し、人気ブランドの古着を中心にラインナップする。大量に買い付けることで仕入れ費用を圧縮する。仕入れ値は売価の約20%で、小売価格は500~5000円が中心。扱い商品はスポーツカジュアルを中心にレディス、メンズ、キッズを揃え、店舗立地で構成比を変える。客が購入するときは、券売機やセルフレジで精算する。売れ残った商品は約2カ月経過した時点でNPO法人(特定非営利活動法人)を通じて寄付する。
無人店舗のため人件費の大幅削減が可能だ。必要な店舗作業も品出しや掃除など最小限にとどめ、週の総労働時間を5時間程度に抑えている。店舗立地は周辺に大学が複数あることや、ファミリー層が多く住んでいる場所で、老若男女が来店できる環境を選ぶ。盗難などの防犯面では「店舗の中が外から見えること、監視カメラの設置、棚卸し時のチェックなどを行っており、吉祥寺店では隣接店に有料で監視してもらっている。これまで盗難はなかった」という。
1号店を21年12月に東京・池袋に33平方メートルで出店。「24時間365日営業」で、開店1カ月で黒字を達成した。2号店のザ・ビッグ昭島店(22年5月開店)は「SC内でのチェーン化の可能性を探る」ために出店するなど今後の事業拡大のための実験を行っている。電子マネーの導入も準備している。全国展開ではFC化を予定しており、熊本にFC1号店を開設、その状況をみながらFC展開を本格化する。
出店先の条件にもよるが、初期費用を100万~150万円程度に抑えることができ、仕入れ費用や人件費を抑えられることから早期に黒字を達成することが可能という。FC展開のためのシステムパッケージが確立していることや店舗メンテナンスに手間がかからないことから、副業やサイドビジネスとして全国から多数のFC店の申し込みがある。南雲代表は「目指すは衣服の廃棄ゼロ社会で、古着の仕入れルートを広げていきたい」と意欲をみせる。