日本酒の輸出額が過去最高に迫る勢いだ。25年は中国・韓国向けが全体をけん引し、約459億円と前年を6%上回り、最高額を記録した22年の475億円との差を縮めた。訪日外国人客の増加を追い風に、業界では国内外で接点を創出し認知度を高めていく。
単価が国内の2倍超
輸出数量は8%増の約3万4000キロリットルと過去最高の3万6000キロリットルに肉薄した。数量で輸出先首位の米国向けが、追加関税措置や外食需要の低価格化などの影響を受け停滞したものの、全体では金額・数量ともに好調だった。輸出先も過去最多の81カ国・地域に拡大した。
国内最大の日本酒団体で日本酒造組合中央会の宇都宮仁理事は、輸出金額が数量の推移を上回っていることが最大のポイントだと話す。1リットル当たりの日本酒の輸出単価は高水準を維持し、香港、シンガポールなどでは1本2000円を超える。
輸出された日本酒全体の平均単価は1400円で、国内平均の740円の約2倍と高いのが特徴だ。近年、日本酒原料の酒造好適米の高騰を背景とした値上げが実施されている。そうした中で日本酒の輸出環境は、円安下のため輸出先のインポーターが吸収し現地の販売価格を維持しているもようだ。
多角化が重要に
今年の組合の活動としては、世界的な酒類展示会やイベントなどに出展し、日本酒を試飲する機会を創出しつつ、商談の場を積極的に設けていく。
日本酒の最大の輸出先は米国と中国。25年は米国のトランプ大統領の追加関税措置や台湾有事をめぐる中国との政治問題の影響が懸念されたが、直接的な影響は小さかった。25年の米国向け輸出は減少したものの米国の外食の二極化や低価格化などの影響が大きいとみられる。中国は日中関係の悪化よりも公務員が宴会などで酒類を控える「倹約令」や不動産不況といった中国国内の問題が懸念される。一部報道で中国向け輸出品の通関手続きが遅れているとあるが、過去にもこうした事例はあった。メーカーは通常より早く出荷するなどの自衛手段を取るしかないのが現状だ。
25年は訪日外客数が過去最高を更新し、インバウンド需要の活況が続いている。国内消費を帰国後の消費につなげるためにも、体験機会の創出と輸出促進の取り組みが求められている。大手食品卸では純米大吟醸酒など高品質な日本酒を小容量の飲みきりサイズで提案し、日本酒とインバウンドとの接点拡大に取り組んでいる。日中関係が悪化する中、中国人のインバウンド減少について見通しは不透明だ。今後はカントリーリスクを分散するため、輸出先の多角化が重要となる。
(日本食糧新聞・岡朋弘)
