22~23年秋冬パリ・コレクション 広がるウクライナへの支援表明

2022/03/08 06:28 更新


 22~23年秋冬パリ・コレクションは緊迫したウクライナ情勢を背景に、ファッション界としての対応が次第に明らかになってきた。ショーを通じてウクライナを支援していく姿勢を明らかにするブランドも現れている。

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 3回目となるガブリエラ・ハーストによるクロエ。ショーの招待状とともに送られてきた小箱の中にはパワーストーンが入っていた。会場に足を踏み入れようとすると、入り口で配られていたのはシューズカバー、靴を汚したくないゲストへの配慮だ。大地の力をショーに持ち込まんとばかりに、一面に砂が敷き詰められた。その力はコレクションにも封じ込まれていた。ネックレスのようにも見えるホールターネックがスカートにつながる。その中央には3種類の違うストーンが並んだ。大きなベルトのような切り替えとなった膝下丈スカートも石をたたえる。バイカースタイルのコートやちょうちん袖のワンピース、スカラップヘムのパネルを配したニットドレスやバッグまでレザーを多用した。環境への影響が怪しまれるビーガン(フェイク)レザーを使うよりも、バイプロダクトであり最近は出元がしっかりと追跡できるレザーの方が環境に優しいと考えるようだ。ベージュ、バーントオレンジ、赤茶とアースカラーが続く。ポンチョやくるぶし丈のドレス、そのグラデーションをニットで表現する。前面に枯れ果てた大地、背中には美しい地球の姿が描かれたジャカードニット。同じモチーフはバッグにも落とし込まれた。今回もプラスサイズモデルを使い、ラグジュアリーブランドのダイバーシティー(多様性)の可能性を示唆した。

クロエ(写真=大原広和)
クロエ(写真=大原広和)
クロエ(写真=大原広和)

 現在のウクライナ情勢にいち早く対応したのはナヌーシュカだ。ハンガリーを拠点にするブランドとして隣国の緊急事態を助けたい。その思いはチャリティーを通した食料、衣類、そしてウクライナ国境からブダペストまでの宿泊施設の提供につながった。ナヌーシュカや「スンネイ」を傘下に持つヴァンガーズグループはウクライナのファッションインダストリーに対する経済的なサポートプログラムも約束した。そんなナヌーシュカのプレゼンテーションは回転台を使い360度見せるとともに、会場を囲うスクリーンにディテールも映し出した。

 ファー調のフリースライニングのコートやジュエリーのようなボタンのロングコート、人気アイテムのビーガンレザーや最近使いはじめたリサイクルレザーは健在。もう一つの人気アイテムであるテーラーリングは、ボーイフレンドジャケットを女性の体に合わせて留めたように、ウエストを締め微妙なドレープを作った。実はモデルのメイクにウクライナの色である青と黄色が使われ、プレゼンテーションでもサポートを見せていた。

ナヌーシュカ

 ウクライナへの配慮はバルマンでも見られた。ショーの冒頭のパフォーマンスがミリタリーが着想源であったために、シートにはデザイナーからのメッセージが添えられていた。とはいえ、具体的なサポートについては明記されていなかった。そんなバルマンはいつもの通りセレブをフロントローに迎えた華やかなショー。プロテクターのようなボディスを多用、バルマンショルダーとともにハードな印象だ。それとは対照的にスリーブやスカート、ディテールとしてレースが使われた。またバイカーも重要なリファレンス。コレクションを通してネオプレンを使うなど、2000年代前半の雰囲気を感じた。最後に出てきたボディープリントはデジャブだった。

バルマン

 イヴ・サンローランの再来とうわさされ華やかにパリのファッション界に登場したシャルル・ドゥ・ヴィルモランがロシャスのクリエイティブダイレクターに就任して2度目のショーを見せた。デビューコレクションはテクノな雰囲気に漫画やパンクの要素を加えた革命的なものだったが、22年秋冬はクラシシズムやミステリアスな感覚などメゾンの持つキャラクターに目を向けたと語る。そのせいか大きなプリーツで腰を強調したダメージ加工のドレスやダブルのタキシードと黒が多かった。もちろん羽のように大きなスリーブのプリントトップや、リフレクションで色を変えるメタリックのプリーツスカートのように、ヴィルモランの持ち味であるオリジナルのプリントやユニークな素材感は健在だ。しかしながらまだ迷いがあるように感じるのが正直なところ。卒業したての若手が1メゾンを任されるのは重任、もう少し見守る必要がありそうだ。

ロシャス

 エキストラロングのスリーブは秋冬の新トレンドなのだろうか。オルセン姉妹によるザ・ロウがパリ・コレクションに初参加した。膝下まで長く伸びたスリーブ、時に幽霊画のように腕にレディーライクなレザーバッグをかけ、わぜと垂らして強調して見せる。そんなレザーバッグに柔らかな布をかけていた。ストールのようなラペルのソフトなスーツ、キルティングのトレンチコートと、上質な素材と美しいテーラーリングの中に、彼女たちなりのリラックスを表現したのかもしれない。

ザ・ロウ

(ライター・益井祐)

 ドリス・ヴァン・ノッテンは、デザインチームとともにプレゼンテーションの準備を進める映像を配信した。映像配信後は3日間、パリ7区の邸宅でビューティーラインの披露とともに展示会を開催する。

 コレクションの背景にあるのは、「フェミニニティーと情熱への讃歌」。官能的な女性らしさとメンズウェアとのコントラストで見せるスタイルだ。ジャケットやコートはショルダーからスリーブにかけて丸いカーブを描き、ドレスはカットアウトやスリットで官能的な雰囲気をプラスする。ぴったりとしたハイネックトップの襟元がフェティッシュなムードを添え、パッデッドやキルティングのアウターが量感のメリハリを作る。ドレスやコート、スカートにブーツ、たくさんのアイテムにアニマル柄をのせていく。襟元を飾るのはバタフライのチョーカーやボリュームたっぷりのネックレス。邸宅の壁紙やインテリアを思わせるプリントやファブリック、エキゾチックなアニマル柄、アンティークの収集品のようなジュエリー、あらゆるものをミックスしながら調和させていくドリス・ヴァン・ノッテンのセンスに改めて驚かされる。

ドリス・ヴァン・ノッテン(Photo Courtesy of Casper Sejersen )
ドリス・ヴァン・ノッテン(Photo Courtesy of Casper Sejersen )
ドリス・ヴァン・ノッテン(Photo Courtesy of Casper Sejersen )

(小笠原拓郎)

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