22~23年秋冬パリ・コレクション 若手デザイナー中心の序盤

2022/03/04 06:29 更新


 22~23年秋冬パリ・コレクションは若手デザイナー中心のスケジュールでスタートした。ミラノの天候とは異なり、パリは薄暗い。それは現在、世界が置かれている不安を映し出しているかのようだ。

 そんな気持ちを忘れさせてくれたのが、オフホワイトだ。昨年急逝したヴァージル・アブローによる最後のコレクション。パリメンズコレクション中にあった彼への追悼の意を込めた「ルイ・ヴィトン」のメンズショーが今も心に残っている。ヴァージル自身のブランドであるオフホワイトにもまた、故人の偉業を称えようと交友のあったアーティストやセレブ、業界のトップたちが集った。超巨大なシャンデリアに透明の大型スピーカー、ここはヴァージルのためのパーティーの場でもあるのかもしれない。

 ショーは寸劇を介しての2部構成。スローガンを掲げた大きな旗に先導されるかのようにモデルが右往左往する。ジャケット、パンツそしてスカートのアンサンブルスーツ、ベースボールブルゾン、プロテクター、ヴァージルのシグネチャー的なアイテムが並ぶ。

 テクノのパイオニア、ジェフ・ミルズがパフォーマンスを始め、背中にスモーキングと書かれたスーツを着たミュージシャンのシュガのたばこに火がつくと、デイウェアからイブニングへと導かれる。クチュールのようなドレスを身にまとうのはナオミ・キャンベルやシンディ・クロフォードなどかつてのスーパーモデルたち。そして今をときめくケンダル・ジェナーやベラ・ハディッドが加わり新旧のトップモデルがランウェーを華やかにした。ステージにも客席にもポジティブなエネルギーがあふれるショーに、天国のヴァージルも万歳してくれたと思う。

オフホワイト
オフホワイト

 「ニナ・リッチ」を卒業したボッターのデザイナーカップルは、以前からサンゴ礁の破壊などの環境問題に対して力を注いでいる。地球上で起こっている様々な変化に敏感な彼らは、ショーの最後にはアフリカ系の人がヘアの装飾に使うビーズで、「ノー・ウォー」の文字をオーバーサイズブルゾンのフリッジにつづり、愛を叫ぶかのようにキャップをハートにくり抜いた。

ボッター

 ニューヨークから海を渡ってやってきた若手ヴァケラは、多目的スペース「3537」でパリデビューを飾った。ゴミ袋のようなビニールシートで隠されたバックステージから勢いよくモデルが飛び出す。真紅のMA-1ジャケットに共布のTバックにいきなりノックアウト。ただアングラなだけでなく、再構築したタータンプリントのようなテクニックも見せた。

ヴァケラ

 ヴァンサントは、LVMHヤングファッションデザイナープライズ2022のセミファイナリストである注目株だ。彼もまた3537でシアトリカルな世界を形にした。ヘッドピースから伸びるオブジェに包まれながらうねる女、フレイル型のレザーバッグを片手に闊歩(かっぽ)するSM女王様、フィナーレにはネットフリックスで人気の「エミリー・イン・パリス」出演中の女優が登場した。

ヴァンサント

 オットリンガーは、ゲーマーたちが集まるアリーナとも言える、観戦席を備えたパソコンゲーム施設でショーを開催した。ゲーム形式やアバターによる発表など様々な憶測が飛び交ったが、結局は事前に撮影された映像キャットウォークでショーは始まりフィジカルへと続いた。カットオフした素材が交差するパンツやジャケットはアシンメトリーのストラップ開閉で、サイバートライブといったところ。

オットリンガー

(ライター・益井祐)

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