22年春夏パリ・コレクション 下着の要素広がる

2021/10/05 06:27 更新


 22年春夏パリ・コレクションは、下着の要素を取り入れたスタイルが広がっている。ブラトップを取り入れた健康的でスポーティーなラインのほか、コルセットやガーターストッキングのディテールを生かしたラインもある。ジェンダーを巡る表現にも注目だ。

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〈フィジカル〉

 パンツが無い―――ラフ・シモンズの男女ミックスのランウェーショーの唯一の違いは、ハイヒールかフラットシューズかというだけ。昨今のはやりであるジェンダーレスのコンセプトを提案した。スーツはスカートとのセットアップで、ロックバンドのツアーTシャツがプリントされた。ハリ感のあるAラインドレスはレイヤードアイテムとして、シャツの上やセーターの下に多用された。スカートやドレスの一方で、世間一般に考えられる男性らしさを象徴するかのように、オーバーサイズのテーラードジャケットとともに、シャツのカフを強調した。紳士服調のタグはニットウェアの胸元で主張した。骸骨ハンドのブレスレットが、事務員のアームバンドのように使われた。

ラフ・シモンズ
ラフ・シモンズ

 パトゥのテーマとなったのは童話や伝説。空想上のランドスケープのみを描き続けたフランス人アーティストのイラストが、サファリスーツやバケットハットを覆う。オーバーサイズのパーカの背中には長靴を履いた猫のパネル。誰もが知るこの童話が初版されたのが17世紀。バロックの要素も重要となる。コットンの大きなラッフルカラーのブラウス、ちょうちんブルマーのようにボリュームあるペプラムスカート、レースのドレスに施された天使や馬のクラシックな壁紙風プリントと、その姿は三銃士のような印象も受ける。この春夏の大ヒットとなったピューリタンカラーは継続、ウェッジウッドの陶器のようなコントラストのある刺繍で彩られた。ポットやカップのモチーフは、ゴールドのチャームとしてチェーンジュエリーを飾った。そんなコレクション全体の95%がサステイナブル(持続可能)で、ブランドの意識の高さを感じさせた。

パトゥ

 朝イチからパリ郊外にあるヴァンセーヌの森に着飾ったファッションピープルを誘ったのは、ニコラ・ディ・フェリーチェによるクレージュだ。木々に囲まれた広い草原に白くランウェーが明記され、爆音と共にショーは始まった。白のネオプレンや黒のパテントのコクーンシルエットパーカ、スナップボタンでポイントを利かせたブーツカットのタイトパンツ。ダブルポケットのミニスカートにはホールターネックのブラトップとクロップトのプリントTシャツで、今風のスポーティーさとセクシーさを加えた。ブランドのロゴを胸元に配したシンプルなドレスの後ろ身頃を風になびくように長くするなど、随所にヘリテージアイテムの要素が見受けられた。これまでの何人ものデザイナーがブランドの再考に挑戦したが、今回は一味違う。

クレージュ

 アクネ・ストゥディオスはいつになくトレンド色の強いコレクションだ。透け感のあるスリップドレスに、パンティーやブラに付いているような小さなリボンで覆われたスパッツ、細身のパンツやタイトスカートにはガーターベルトのディテールを取り入れる。ランジェリーの要素が随所に見られた。ニットのカーディガンやスカートですら、着倒した下着が薄くなり伝線してしまった様子を再現しているかのよう。お部屋グランジと言ったところだろう。中でも重要なのがコルセットだ。バラのモチーフのレザーコルセットだけでなく、ソックスにまでレースアップのディテール。またベアトップやドレスの縫い代を外に出し、コルセットのボーンのようにも見せた。アウターの装飾やバックルなどのメタルウェアにはウェスタン調が用いられていたが、コルセットからゴールドラッシュ時代に派生したのか、はたまたスウェーデン人のウェスタン好きから来たものなのか。90年代やミレニアムのお色気ファッションをうまくハイファッションに昇華していた。

アクネ・ストゥディオス

(ライター・益井祐)

〈デジタル〉

 コペルニは、屋内に背の高い植物に覆われた空間をしつらえた。その間を縫って出てきたのは、健康的に肌を露出するスタイル。リゾートの開放感と都会的な華やかさ、どこか民族的なムードも感じられる。フィッシュネットやサテンのトップは、バストを強調したクロップト丈。ストレートシルエットのロングスカートとのバランスは、ベリーダンスの衣装を思わせる。大きくカットアウトしたテーラードジャケットや華奢(きゃしゃ)なブラトップによる大胆な肌見せは、ワークディテールのボトムでカジュアルダウン、ラメやスパンコールが強い輝きをプラスする。

コペルニ

(青木規子)

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