「アワ・パリ」の初のショーがパリ市庁舎で開かれた。なぜ市庁舎なのか。
それには理由がある。アワ・サティングさんは2年前、アワ・パリ・オ・フェミナンを立ち上げた。これは就職が困難な立場にある移民、特に女性の雇用を目的とした社会統合プロジェクト。パリ市の支援を受けて昨年開館した循環型ファッションの初のプラットフォームや市内にアトリエが設けられた。アンヌ・イダルゴ市長は「アワはパリ市民みんなのファッションメゾン。ショー会場は市庁舎以外にはない」と強調した。
アワはデザイナーを起用し、「バルマン」をはじめパリのラグジュアリーメゾンから無償で提供されたデッドストックを素材に、様々なレベルの26人の手がアップサイクリングコレクションを制作している。
アトリエのチーフは、ニューヨークでデザイナーとして活躍しパリに拠点を移した竹内麻弥さん。ショーで素人のモデルがまとったデニムパッチワークのオールインワンやパンツ、アシンメトリーのドレスはタイムレスな美しいシルエットを描き、竹内さんら指導陣と職人の卵たちのチームワークが伝わる。
環境のためにすべきこと、社会のためにできること。パリの産業と多様性から一つのビジネスモデルが始まった。
(パリ=松井孝予通信員)