繊研記者の問題意識③ー大竹の場合

2016/03/28 14:35 更新


繊研記者の問題意識シリーズ、第3回目は、メンズ担当、大竹清臣です。93年の入社。新聞の紙面レイアウト、見出し付けなど製作部門を経て記者に転身、百貨店を振り出しに素材、製造分野を経て、現在は、メンズのアパレル、靴、バッグ、革小物などの商品とそれを扱う企業を担当しています。大手のブランドや小売の動向にとどまらず、新興ブランドや地方の実力派専門店、工場などもの作りの現場まで全国を飛び回って取材しています。

 

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Q.あなたは誰に向けて記事を書いていますか?

A.従来と違う視点を持ってもらえるニュースを伝えようと思っています。

ファッションマーケットの主役はレディス分野で、ヤング向けの動向が注目されることが多いです。メンズはレディスに比べ市場規模は大きくありません。日本の衣料品消費市場の大体3割くらいがメンズと言われています。僕の場合、メンズファッションの分野で働いている方が読者の中心になりますが、メンズ以外の分野で働く方にとってもビジネスのヒントになり、仕事に役立てることのできる記事を書きたいと思っています。

メンズのファッションにもシーズンごとのトレンドというものはあるのですが、それだけではなく、もの作りへのこだわりというものが売れ行きや消費者の支持を左右することがあります。特に大人向けのメンズファッションに見られる傾向なのですが、こうした男性特有の消費動向などを伝えることで、読者の方たちにも従来と違った視点を持ってもらえたらと思っています。

 

 

Q.取材で心がけていることはなんですか。

A.取材でお話を伺う相手と信頼関係を築くこと、これに尽きます。

僕たちは記者として、取材先に接するわけですが、そこは結局、「人対人」なのです。こちらが信頼してもらえないと、踏み込んだ話も聞けない。繊研新聞は、ファッション分野に特化した業界紙ですから、基本的には、「良い意味で取材先を応援する」のが役割だと思っています。

もちろん、だからといって、その企業をむやみに持ち上げるようなことをするわけではありませんよ。取材対象の企業や業界の現状を丁寧に分かりやすく、ときには提言や課題の指摘なども含めて正確に伝えることが大事と思います。

 

 

Q.担当分野の取材、報道を通じて読者に伝えたいことは?

A.地方や中小でもその存在感が光る企業やブランドがあるってことです。

先ほどお話したもの作りへのこだわり、という部分では、素材・製造分野の取材担当だった経験を活かし、「ものづくり最前線」など、日本に残されたユニークな工場を取り上げる記事の取材に力を入れています。また、昨年からは「ローカル」を切り口にしたテーマ取材も増やしています。ファッションはこれまでのような東京一極集中型ではなくなってきているのでは、と感じるからです。

 

繊研新聞2016年3月2日6面
繊研新聞2016年3月2日6面


《ものづくり最前線》お直しのサルト 職人技で難易度高い要望に対応
《ものづくり最前線》店頭で思いやこだわりどう伝える? タグやPOPの効果に再注目
《ものづくり最前線》まねできない技術で極細の麦わら帽 美しさ追求「日本の名品」へ
《ものづくり最前線》「オニベジ」開発者に聞く誕生秘話 小松精練担当者に聞く
《ものづくり最前線》原糸、製品の双方を扱う染色加工場 ものづくりを次世代に継承 
《モノづくり最前線》生産増えるかりゆしウエアの沖縄の縫製業 持続可能な産地へ

 

地方には織物やニット、縫製などもの作りの現場に近い場所でブランドを立ち上げたり、ビジネスを始める人もいます。こうした、ローカル発で小さいけれども、個性の光るブランドの中には、市場で、一定の支持を集めているものもあります。背景には、消費者が感じる「豊かさ」の基準が変わり、最大公約数的で金太郎飴のような商品を避け、ストーリーが伝わる商品を求める傾向が強まっていることがあります。

特に東日本大震災以降、この傾向が顕著になってきているのではないでしょうか。繊研新聞は、震災直後から継続的に被災地の企業を追いかけています。先日も震災から5年が経過した被災地のファッション関連企業を取材し、その現状を報道しました。被災地に足を運ぶたび、震災が与えた、日本のファッションのあり方、消費動向の変化について、いつも考えさせられます。

 

繊研新聞2011年3月15日付1面
繊研新聞2011年3月14日付1面

 

《東日本大震災5年》震災の教訓、全国で共有を


Q.あなたの担当分野の記事のオススメの読み方は

A.どんなことについて取り上げた記事にも、何かしらの気付きや発見を見出してもらえたら、と思っています。

取材は「人対人」のやり取りだと、言いましたが、だからこそ、繊研新聞の記事は、取材記者と対話するつもりで読んでほしいです。僕の担当しているメンズ分野に関して言えば、レディスに比べてマーケット規模も小さく、限られるからこそ、レディスの記事と読み比べることでメンズの独自性やレディスの動きとの共通性も見えてくると思います。

「ローカルでいこう」というテーマ連載や地方の個人経営の専門店を取材した記事なども繊研新聞は積極的に掲載しています。地方の小さな動きを取り上げるのは、そうした地域の人たちに向けてだけ書いているのではありません。大手企業や東京などの巨大マーケットで働く人たちにとっても、何かしらの気づきや発見があるかもしれない、そう思って、取り上げているのです。

 

繊研新聞2015年10月27日付1面
繊研新聞2015年10月27日付1面


ローカルでいこう&ファクトリー1
ローカルでいこう&ファクトリー2
ローカルでいこう&ファクトリー3
ローカルでいこう&ファクトリー4
ローカルでいこう&ファクトリー5

 

Q.あなたの担当分野で、今一番の問題、課題はなんですか

A.大手アパレル企業が直面する不振と、その打開策です。

大手アパレルメーカーが不振に陥っている構造的な問題が、メンズだけでなく、業界全体にとって一番の問題でしょう。大手アパレルの多くはレディスが主体ですが、メンズブランドも扱っている企業もあります。こうした企業が再び蘇るには、おそらく、抜本的な改革が必要です。この問題については時間をかけて、繊研新聞でも多角的に追いかけ、報道する必要があると思います。

 

 

Q.16年はどんな取材をして、どんな記事を書こうと思っていますか。

A.オーダースーツ市場や地方の個性派専門店などについて、きめ細かに報道していきます。

メンズに限ってお話しすると、ファッションのカジュアル化が進み、スーツ市場に元気がないのですが、一方で、オーダースーツの商売の堅調さが最近際立っています。この分野の動向については今後、生産背景から小売、新規参入企業まで、丁寧に取材し、お伝えしていきます。それと、地方の個店など「ローカル」をキーワードにした取材記事は継続して掲載してく予定です。

 

 

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【シリーズ 記者の問題意識】

繊研記者の問題意識①ー小笠原の場合
繊研記者の問題意識②ー田中の場合
繊研記者の問題意識④ー若狭の場合
繊研記者の問題意識⑤ー柏木の場合

 

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