今回はファッション関連企業のすてきな最新オフィスを紹介します。おしゃれでクリエイティブな空間はもちろん、注目はどこの会社も社員同士のコミュニケーションを大切にしていること。従来は顔を合わせる機会がなかった相手との何気ない会話から、新しいひらめきも生まれそうです。こんなところで働きたい!
★ビームス
フリースペースで社員の交流活発に
ビームスが、分散していた事務所機能を移転、統合したのは17年10月。本社機能と人員を集約した。オフィスのデザインは、数々のビームス店舗の内装を手掛けてきた、ビームス創造研究所の南雲浩二郎クリエイティブディレクター。店舗デザインで培ったノウハウを新オフィスにも生かしている。

「従業員同士の距離を縮め、活発なコミュニケーションができる空間」を目指した。このため、5層の各フロアにフリースペースを作った。調度品はフロアごとに違い、大人数で使える長テーブルやゆったりと座れるソファも置く。新たに用意した調度品以外に、店舗で什器として使っていた椅子やテーブル、照明器具も流用した。
間仕切りを付けたブース席や、プレゼンテーションにも使えるひな壇を置いたフロアもある。一度に複数のグループがミーティングする際、互いの会話が邪魔にならないよう、隣り合うテーブルセットは高さを変えて音の響きがぶつからないように配置している。社員はどのフロアのフリースペースも使える。


オフィスが分かれていた時は話をしたこともない社員もいたが、移転から8カ月が経ち、休憩時に部署の異なる社員同士が顔見知りになったり、隣り合わせた席で、偶然の会話から仕事のアイデアが生まれたり、業務の垣根を越えて、コミュニケーションが取れる環境が整ってきたという。



★アダストリア
渋谷の街を眺めるおしゃれカフェ
アダストリアは17年7月に渋谷ヒカリエに移転し、主に3拠点に分かれていた東京のオフィスが一つになった。ビル内の5フロアを使用し、中でも特徴的なのがエントランスを構える27階にあるカフェ「Aカフェ」だ。約200席のAカフェは普段は社員食堂として、飲食関係のグループ会社が運営する。デリを組み合わせた週替りのランチメニューなどがリーズナブルに食べられ、支払いも電子マネーでスマート。モーニングやカフェタイムも営業し、終業後のコミュニケーションの一環として夜は試験的にラウンジとしてお酒を扱う日もある。

たくさんのグリーンと無機質な天井を組み合わせたおしゃれで広々とした空間はまるで本当のカフェのよう。社食以外でも多く活用され、商談や打ち合わせ、社内の交流会、中国語の勉強会、消費者向けのヨガイベントなども開いている。「移転前と比べて他部署の人と話すきっかけが増えた。眺めがとても良いので、気分転換にもなる」と同社。上のオフィスフロアにもフリースペースを設け、自由な環境で仕事ができるようにしている。


カフェの壁面の大きな棚は、社員が不要な本を持ち寄り貸し出すシェアブックのコーナー。集まった本を読書好きの〝図書委員〟がキュレーションし、テーマ別に分けて並べている。ビジネス書からアート本、マンガまで幅広く、これも社員同士をつなげる役割を果たしている。


★日華化学
柔軟なアイデア促し〝化学反応〟狙う
繊維加工剤などを製造する日華化学(福井市)が昨年秋、本社に開設したのが「NICCAイノベーションセンター」(NIC)だ。研究開発や営業関係のスタッフから役員までが一堂に会する最新オフィスで、部署を超えた〝化学反応〟を狙う。
NICは地上4階建て、延べ床面積7300平方メートルで、総工費50億円を投じて新築した。空間に一体感を感じられる大きな吹き抜けや、壁の中のパイプを地下水が通って室温を一定に保つ「ハーベストウォール」、直射日光は防ぎながら採光・拡散させる天窓など、福井の気候も生かした設計になっている。


同社の事業領域は、大きく分けて二つ。撥水(はっすい)剤などの化学品部門と、業務用ヘアカラーなどの化粧品部門があり、3階に化学品、2階に化粧品が入る。フロアは分かれているが、館内に2カ所あるカフェやライブラリーといった共有スペースを確保し、部門を超えて人の接点が生まれる工夫がされている。


フリーアドレスで、作業机は向かい合わせやサークル状など自由なレイアウトが可能。NICのためにデザインされたもので、化学用語のベンゼン環=六角形から発想したもの。ライブラリーにはゆったりしたソファが備えられているほか、集中したい時に使える個室ブース、アイデアを自由に書き込める大型の壁面ホワイトボードなど、イノベーションを生むための仕掛けが随所にある。


★ファッション・コ・ラボ
映画を手本にモダンな雰囲気
ファッションEC企業を舞台にした、アン・ハサウェイ主演の映画『マイ・インターン』をヒントに、モダンな新オフィスを設けたのはファッション・コ・ラボ。
ワールド子会社で、映画同様にファッションECや、EC支援などを行う同社が外苑前にオフィスを移したのは昨年7月のこと。約80人が働くワンフロア約4300平方メートルの空間は、シックな黒い格子戸やつりランプ、作品中にも登場する「いいことがあった時に鳴らすベル」(中嶋築人社長)など、映画のオフィスをほうふつとさせるデザインになっている。


移転の際にもう一つ、テーマに据えていたのが、コミュニケーションの活性化だ。会議室だけでなく、通路などにオープンな打ち合わせスペースを複数設置。デスクはホワイトボードにもなり、図面などを直書きできるようになっている。オフィス全体がガラス越しにのぞけるエントランスも、こだわりスペースの一つ。テキスタイル製のファサードがうねりながら吹き抜け天井に向かう様は、「ベンチャーのダイナミックさを表現したもの」と中嶋社長。

休憩室も充実している。シーリングファンの回る明るいスペースに、スタイリッシュなチェアセット。最新型の喫煙スポットもある。壁には大型ディスプレーがかかり、「今後、定期的に映画鑑賞会やサッカー観戦も企画できれば」としている。

