【ニューヨーク=杉本佳子通信員】米国のミネソタ州ミネアポリスでアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんが警官から膝で首を押さえつけられて死亡した事件で、全米のみならずヨーロッパにも抗議行動が広がっている。ニューヨークでも先週木曜日以降連日抗議行動が行われ、土曜日はソーホーで一部の群衆が暴徒化し、被害を受けた店が続出した。ブルーミングデールズの前には、日曜日の午後も放火されて焼け焦げたパトカーが放置されていた。
日系ブランドでは、パドカレの直営店が重い金属製のわっかを投げ込まれ、窓ガラスを割られた。ユニクロ、MUJI、マウジー、トゥモローランド、プリーツプリーズ・イッセイミヤケは無事だった。アベイシングエイプも新型コロナで臨時休業中、空き巣を防ぐために付けられた板に落書きされた程度に留まった。
パドカレの向かいのグッチは空き巣防止用の板を打ち付けてあったが、板で覆っていなかったドアのガラスが割られた。それでも内側のシャッターで略奪は免れた。シャネル、アリス+オリビア、MCM、ルイ・ヴィトン、ザ・ノース・フェイスも窓ガラスを割られた。アディダスはドアを壊され、大勢が出入りして商品を略奪していった。アナ・スイ、モスキーノ、コスなど、ウインドーディスプレーをしたまま臨時休業していて無傷だった店もあり、板を打ち付けたり在庫を売り場に置いていなかったりしたことと無関係に店が襲われたことがわかる。多くの銀行の支店も襲撃された。
ニューヨーク市は6月8日から、第1段階の商業活動再開を予定している。今まで閉店していた小売店は、第1段階では店内にお客を入れることは認められず、店の外での販売に限定される。試着を必要とするアパレルは売りづらく、本格的な再開は、お客を店内に入れることができる第2段階まで待たないといけない。新型コロナウイルスでただでさえ経営難に陥っているのに襲撃された店は、「泣きっ面に蜂」状態だ。加えて、抗議活動の最中は、マスクをしている参加者は多かったものの、「ソーシャルディスタンス」はどこへやらという状態で、コロナ感染者が再び増える可能性が懸念されている。ニューヨーク市のデブラシオ市長は、市外から来た人々による組織的な暴動を示唆し、米国の人種差別問題の根深さが改めて浮き彫りにされている。