私たちが運営する「コヒナ」は、今では共感マーケティングのお手本のように言われることも多いのですが、共感を生もうと思って始めたわけではありません。身長148センチの自分が着たい物が市場になかったから始めただけ。デザイナーブランドでもないですから、自分だけでなく、同じ悩みを持っている人の声を代弁し形にしたい、というのがきっかけです。
事業ですから、「私」は「私たち」になり、会社だけでなく共感してくださる皆さんが着たい物を作りたかった。デビュー前からインスタグラムにアカウントを設け、「ご飯に行ってコートを脱いだ時、キッズ向けのタグが見えて恥ずかしい」とか「低身長あるある」を発信してきました。
今ではコミュニケーションの軸となっているインスタライブは1年365日、1300日以上連続で続けています。ここまでやると、お客様も「私の悩みは伝わり、共感してもらえるんだ」と思ってくれる。1回聞くだけで終わると、「いいように使われただけ」という風にも伝わりかねませんから、むしろやらない方がいい。
ライブ配信を通じて自分たちの考えをお伝えし、お客様の声も同時に拾って一緒に形にする。その繰り返し。デザインを提案してもらうこともありますし、色のアドバイスをしてくれたりもします。お客様は同じ気持ち、悩みを抱いている仲間のような存在で水平な関係。そこまでいくと買い手、売り手ではもうなくなります。気付いたら共感マーケティングになっていたというのが本当のところです。
(「コヒナ」ディレクター)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。