最新版英国長者番付「クイーンは女王より金持ち!」(若月美奈)

2019/05/24 06:00 更新


Medium rich list 1

日曜紙「サンデータイムズ」による毎年恒例の英国長者番付「リッチリスト」が発行された。1989年からスタートし、今年で31回目。別冊カラー冊子「サンデータイムズマガジン」が、この日だけまるごと「リッチリスト」になる。

「リッチリスト」については以前、2015年5月13日付のコラムで「ポール・スミスはベッカムより金持ち!」というタイトルで紹介した。このランキングについての簡単な説明や、そこに登場するファッション業界関係者について綴っているので、お時間があればまずはそちらをちらりと見ていただければ嬉しい。

「サンデータイムズ」にとってこの日の新聞はドル箱とあって、発売前から毎日のように日刊紙「タイムズ」に広告を掲載。1週間前には「サンデータイムズ」1面で予告記事を流した。

そこに掲載された写真はフレディ・マーキュリーで、記事のタイトルは「QUEEN ARE WEALTHIER THAN THE QUEEN(クイーンは女王より金持ち)」というわけだ。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットにより、他界したフレディ以外の3人のメンバーの合計資産総額は4億4500万ポンド(約630億円)になり、エリザベス女王の3億7000万ポンド(約520億円)を抜いたというトピックが紹介されている。

エリザベス女王やブライアン・メイなどのそっくりさんが逆さずりになり、「EVERY PENNY COUNTED (1ペニーももらさず数えました)」というキャッチコピーがついたリッチリストの広告」

ちなみに3人の内訳は、ギタリストのブライアン・メイが1億6000万ポンド、ドラマーのロジャー・テイラーが1億5500万ポンド、ベーシストのジョン・ディーコンが1億3000万ポンド。3人ともミュージシャン部門のトップ20にランクインしているが、ブライアンで10位と、上には上がいる。断トツ1位のポール・マッカートニーはじめ、その他のリストは下の掲載ページでご確認を。

そんな風に今年のトピックとして紹介されたクイーンだが、ブライアンですら1000人中の731位と、154ページにわたる小冊子の119ページ目にようやく登場する程度。一生かかっても使いきれない資産を持ったスーパーリッチな人々はわんさかといるのだ。

クリーンのメンバーとミュージシャン部門のトップ20が掲載されているページ

では、トップに目を向けてみよう。

今年の1位はインド出身の実業家、ヒンデュジャ一族で資産総額は220億ポンド(約3兆1000億円)。2017年、2014年にも1位となったお馴染みの顔である。

といっても、名前も覚えられないようなそれほど馴染みのある人々ではないのだが、5位にはとっても馴染みのある名前が登場している。サイクロン掃除機で知られるダイソンの創業者ジェームズ・ダイソン一族だ。

資産総額126億ポンドで昨年の12位から大きく前進。掃除機だけでなく、扇風機やドライヤーなど次々とヒット商品を出しているダイソンは、シンガポールへの本社移転を計画しているが、つい最近、電気自動車生産に向けてシンガポールでの人材募集を進めているというニュースが流れたばかりである。

それにしても5位とは驚かされる。あのヴァージングループの創業者であるリチャード・ブランソン卿(68歳)とジェームズ・ダイソン卿(72歳)は、サクセスストーリーや年齢など、なんとなく近いものを感じるのだが、ブランソン一族は資産総額40億5000万ポンドで34位。ダイソン一族はブランソン一族の3倍以上の資産で順位を引き離しているというわけだ。

航空や鉄道、通信メディアよりも、掃除機や扇風機の方がお金が稼げるということ?

さて、肝心のファッション関係者は相変わらず同じような名前が並んでいる。大半がファストファッションチェーン系の富豪だが、最初に登場するのは21位のフランソワ・アンリ・ピノー&サルマ・ハエック夫妻。ケリングのピノー氏と女優のサルマさんの資産総額は68億4000万ポンドで、毎年じわりじわりと順位を上げている。

「トップショップ」「トップマン」を擁するアルカディアグループのオーナー、フィリップ・グリーン夫妻は泥沼のスキャンダルで資産を削らざるおえない状況が続き、少し前はトップ10にランクインしていたのだが今年は156位、「極度乾燥(しなさい)!」という日本語のブランド表記で知られる「スーパードライ」の共同創業者ジュリアン・ダンカートン氏は604位。ラグジュアリーオンライン販売のネッタポルテの創業者で前英国ファッション協会会長のナタリー・マセネット女史は787位などなど。

そしてなんと、重大なお知らせが・・・

2015年に「ポール・スミスはベッカムより金持ち!」とタイトルにもし、「会社こそ資産。会社の時価総額を考えれば、この結果は当然」と落とし込んだこの2人(正確には2夫妻)の関係が逆転しているのである。

デビッド&ヴィクトリア・ベッカム夫妻はポール・スミス夫妻より金持ちになったのだ。実は今年ではなく、下記の通りすでに3年前に逆転している。


ポール・スミス夫妻

2015年 2億9000万ポンド(353位)

2016年 2億5000万ポンド(418位)

2017年 2億7200万ポンド(420位)

2018年 2億5000万ポンド(480位)

2019年 2億5000万ポンド(490位)


デビッド&ヴィクトリア・ベッカム夫妻

2015年 2億4000万ポンド(410位)

2016年 2億8000万ポンド(377位)

2017年 3億ポンド(382位)

2018年 3億4000万ポンド(372位)

2019年 3億5500万ポンド(372位)


ポール・スミス夫妻は資産総額ほぼ横ばいで順位を緩やかに落としているのに対し、ベッカム夫妻がぐんぐん資産を増やしている。

コレクションを発表しているデザイナーとして、1000人の長者番付に名を連ねているのは、ポール・スミスとヴィクトリア・ベッカムの2人だけ。もっとも、「ヴィクトリア・ベッカム」ブランドはまだまだ投資の段階で黒字転換していない。あのラグジュアリーなショップやショーも、他で稼いだお金をどっと注ぎ込んで実現しているということのようだ。

生粋にファッションビジネスで現在の資産を築いたポール・スミス卿はやっぱりすごい!

「リッチリスト」には、様々なデータが載っていて、それも楽しみの1つ。今回目に止まったのは、世界の億万長者(英国ポンドに換算した時のビリオネラー)の数の国別ラインキングと、都市別ランキングだ。

国別ではアメリカが463人でトップ、中国(294人)についで、英国(151人)は3位。一方、都市別ではロンドンが95人でトップ。サンフランシスコ(73人)、ニューヨーク(71人)、香港(61人)と続く。

ロンドンは世界1金持ちが集まる都市というわけだ。

ところが、「リッチリスト」がついた日の「サンデータイムズ」本紙の1面トップ記事によると、今、英国のスーパーリッチな人々が国外脱出準備を進めているというのである。

ブレグジット(EU離脱)のごたごたで、メイ首相率いる保守党が敗れ、ジェレミー・コービン党首率いる労働党が政権を握った場合、高額所得者への大幅な増税が予測されている。そこで、億万長者たちがハルマゲドンならぬ「コービゲドン」から逃れようと国外脱出を考えているというのである。

はたして、ロンドンは世界1の億万長者たちのホームタウンの座をこのまま保てるのだろうか。

などなど、今年も「リッチリスト」は様々なへ~といった話題を提供してくれた。これだからリッチリスチャーはやめられない。

≫≫若月美奈の過去のレポートはこちらから

あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員

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