山梨県西桂町で、55年の歴史を紡ぐ織物メーカーの武藤。圭亮さんはその後継者として、父の武藤英之社長、弟の亘亮さん(小売生産管理)とともに、会社を引っ張る。武藤の代名詞がストールだ。天然繊維が持つ風合いを大切にし、シャトル織機でできるだけ糸に負担をかけず織り、富士山の湧き水で洗って不純物を取り除く。そうして生まれる柔らかい質感が「武藤の肌触り」と胸を張る。
2年前から、ワンピースやトレンチコートといったアパレル製品も手掛ける。展示会や期間限定店で一緒に出せば「ストールが映えるのでは」と始めたが、ここでも「織物メーカーだからこそ突き詰められる、触って気持ち良い生地作り」にとことんこだわる。ワンピースはオーガニック超長綿のデニム調、トレンチコートはシルク100%を高密度に織った。
ゆくゆくは「(武藤の商品で)生活の一部を上質にする」というテーマで、インテリア・ライフスタイル分野のアイテムも増やしていきたいという。既にクッションやブランケット、タオルを開発しており、採用も決まり始めた。
大学時代に建築を学ぶなかで育くんできた「空間にどんな物が求められているか」という視点が、テキスタイルデザインで生きることも多いという。武藤さんが開発したインテリアテキスタイルは、有力家具メーカーのカンディハウスなど新たな販路を切り開いた。「いつかは憧れの隈研吾さんと仕事をしてみたい」。そんな夢も抱く。
むとう・けいすけ 大学を卒業後、建築設計に従事し、15年に武藤に入社。33歳。