パリで7月に開催されたマルタン・マルジェラのオークションが話題を集めていた。本人が所有していた作品や物作りの背景にあった資料などを出品したもので、最も高額で落札されたのは初期のグラフィティのタビブーツ。その額は6800万円にも上った。パリに続き、まもなく日本でも開かれるという。
マルジェラ本人が私物を出品した理由の一つとして、コンディションを維持しながらの保管の難しさを挙げていた。確かに衣服は宝飾品などと比べて劣化しやすいし、そもそも着ることを前提に購入するものだ。何十年にわたって初期のコンディションを維持するのは、博物館などが収蔵目的で購入したものでないと難しい。
考えてみれば、「リーバイス」の初期型デニムジャケットや、古いジーンズは希少性があり昔から高額で販売されていた。リーバイスの最初期のモデルが発見されて、その歴史的価値から高額で買い取られるニュースも聞く。古着が収集の対象になるのは珍しくない。
服飾の歴史的な意味を考えると、それを収蔵して展示する意味はもちろん否定できない。しかし、ファッションという新しさを追うべき文化が、こうした投機の対象になることへの違和感もある。今のオークションを巡る現象をどう理解すればよいのか、いまだに答えは出せずにいる。
