小学生の頃、よく朝礼台に旗が立っていた。運動場に出てはいけない合図で、光化学スモッグと呼ばれる大気汚染が原因だった。
先月、ベトナム・ハノイ近郊で縫製工場を運営する社長から号泣の絵文字が入ったメールが来た。近年ハノイでは大気汚染がひどく、ついに世界中で最も空気の汚い都市になってしまったそうだ。バイクや自動車の排気ガス、産業発展などによるもので、特にこの時期は空気が停滞してよどみやすいことも要因のようだ。
世界の大気汚染の状況はインターネットで随時見ることができる。通年ではインドやバングラデシュ、中国などの都市がワーストランキングの常連。「ひどすぎる。命の危険を感じるほど」とはそうした地域の駐在員からよく聞く話だ。
米国の研究機関が昨年、ユニセフ(国連児童基金)と協力して世界の大気汚染に関する報告書をまとめた。それによると21年にPM2.5などが主要因で亡くなった人は世界で810万人。5歳未満児が特に影響を受けやすく、70万人以上が亡くなった。この年齢層では栄養不良に次ぐ第2位の死亡リスク要因だ。
対策は取られるが新興国での大気汚染は続く。この課題を事業機会に変えることも重要だが、命の危険と隣り合わせで頑張る駐在員や現地スタッフに対し、安心して働ける環境やケア体制を整えることも企業の重要な役割だ。