《めてみみ》歴史に触れる場所

2023/12/06 06:24 更新


 岡山県倉敷市の児島地区は、日本を代表する繊維産地の一つだ。個性的なショップが集まるジーンズストリート、「ベティスミス」のジーンズミュージアムなどが人気を集め、休日ともなると他府県ナンバーの車でにぎわう。

 児島は学生服の一大産地でもある。有力学生服メーカーが本社を構え、国内の70%近いシェアがあるとも言われる。制服という性格上、個々人のサイズに対応しながら、春の入学期に一斉に納入することが求められるため、国内生産比率も高い。地域経済における産業の重要度はジーンズに引けをとらない。

 この地で、本社工場内に児島学生服資料館を設けているのが日本被服。創業は江戸時代の末という老舗である。資料館は他社のものを含めた懐かしい写真、昔のミシンや制服、ホーロー看板、当時のアイドルを起用したポスターなどの資料が並ぶ。2階には学生服の試着コーナーもあり、学生時代を思い出しながらの写真撮影も自由にできる。

 「この工場だけで700人を超える工員がいて、近隣の県から多くの人が寮で暮らしていた」という。のこぎり屋根の工場や寮生が集まった建屋なども残る。往時の繁忙は望むべくもないが、地域が歩んできた歴史をたどれる場所は大切なもの。各地で廃業する工場が増えるなか、貴重な資料、機械などを何とか残してもらいたいものだ。



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