4年ぶりにベトナム・ホーチミンに出張し、意外だったことが二つある。一つは急拡大する消費市場の勢い。もう一つは、欧米のオーダーに押され、日本向けの衣料品生産が盤石ではない点だ。
以前は閑散としていた「パークソン」は大改装で百貨店業態から、「ユニクロ」「無印良品」「コーナン」が大部分を占める〝ジャパン館〟に変わっていた。混雑するユニクロ店内では、日本よりも高い商品を買い物かごに次々と放り込むベトナム人の姿。吟味して買う日本人とは対照的に映った。
物作りでは課題に直面していた。今は苦しくても中国からの生産シフトで安泰だと思いきや、そうではなかった。他産業との人材争奪で人手が足りず稼働率が低下。その上欧米からのオーダーが戻り、日系商社は生産背景の確保に苦労する。協力工場にライン契約を申し入れても欧米向けを優先し、断られるほどだ。生産数量が少なくQR、低価格、高品質を求める日本向けは工場にとってメリットが薄い。以前から「欧米オーダーが増えれば日本向けは断られる」と危惧されていたが、現実になってきた。人件費も上がっている。
最優先は安定調達。それには日本本社が数量をまとめ、継続的、計画的に発注することが重要。「断られない」ための対策が必要だ。これはベトナムだけに限ったことではない。