《めてみみ》心を溶かす魔力

2020/01/14 06:24 更新


 母はアメリカ人の男性からチョコレートをもらったことがあるという。名も知らぬ進駐軍の将校が、ジープを追いかける子供たちに配ってくれたそうだ。長い足、優しそうな笑顔、初めて味わうとろける甘さ。鬼畜の国と教わったアメリカは、憧れの国に変わった。チョコレートには人の心を溶かす魔力があるようだ。

 日本人のチョコレートの消費量は年々増加している。全日本菓子協会によると17年は30年前の約1.5倍の1人当たり年間2.2キロを食べた。カロリーや糖質の高さから食べ過ぎると太ると敬遠していた人も、近頃はカカオポリフェノールの健康効果から見直し始めた。とはいえ、浮き沈みの激しいスイーツ界で長年、先頭を走り続けてきたのは、バレンタインデーの隆盛と無縁ではない。

 2月14日のバレンタインデーを前に早くも百貨店のイベントが始まる。昨年、27億円を売り上げたJR名古屋高島屋の「アムール・デュ・ショコラ」は17日のスタート。今年はメインの催事場に加え、4フロアにサテライト会場を設けた。増える男性客に応えるため、アムールのバイヤーに男性を起用し、オトコ目線の売り場も充実させる。

 贈り物から自家消費、女性のイベントから男性も楽しむイベントへと、バレンタインデーは懐を広げ、チョコレートの消費を押し上げている。



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