プリントを中心とする和歌山染工(和歌山市、髙垣佳宏社長)は、京セラドキュメントソリューションズジャパンの顔料インクジェットプリンター「フォレアス」を4月に導入した。顔料インクは風合いや色の深みなどの面で染工場からネガティブに受け止められることも少なくないが、プリント後の処理が乾燥のみとシンプルで、小ロット・短納期のオペレーションに適する。「一部縫製まで手掛けた直販事業を強化しており、素材の幅も広げたかった」という和歌山染工にとって、フォレアスはビジネスの可能性を広げる選択だった。フォレアス導入の経緯や、今後の展望について聞いた。
環境対応の流れに危機感
――デジタル(インクジェット)プリントを導入したのはいつごろから。
髙垣佳宏社長 当社は1907年に創業しました。以来、スクリーンプリントを軸に事業を行ってきましたが、いつかはデジタルに移行するだろうと見て、30年前に初期のインクジェットプリンターを導入したのが最初です。低速機でスタートし、その後、高生産機の登場に伴って染料インクを使ったプリンターを導入、12年頃から商業ベースに乗り出しました。
――フォレアス導入の経緯は。
髙垣佳宏社長 顔料インクジェットプリントの登場で環境対応に関心が移り、特に欧州がリードする形で一気にそちらに流れるかもと感じました。染料インクの場合はプリント後にスチームや水洗といった工程が必要で、生地1キロあたり150リットル以上の水を使用します。フォレアスはプリント時に水を使わず、搬送ベルトの洗浄にも水循環システムが搭載されています。生地1キロあたりの水使用は0.02リットルと極限まで抑えられているのは大きなメリットです。さらに我々として関心を持ったのは、二酸化炭素(CO₂)排出削減につながる点でした。
黒色の濃度や鮮明さ、風合いの硬さなど顔料インクに対する懸念もありましたが、色調整や加工技術を組み合わせることで十分対応できると感じています。プリント後に乾燥してすぐ出荷できるというスピード感、色の安定性といったメリットがあり、これらを生かせるのではと考えました。当社として直販事業に力を入れているタイミングでもあり、こちらにも生かせると期待しました。

色調整や風合い処理で染工場にメリット
――4月に導入し、手応えは。
髙垣佳宏社長 フォレアスはプリントと連続工程で前処理が行えます。これまではあらかじめ前処理した生地を注文に備えてストックしておかなければならず、前処理済みの生地が経時変化で傷んだ際はやむを得ず処分することもありました。こうした点でも廃棄ロス削減につながると期待しています。
我々染工場がフォレアスを導入することで差別化につなげられると感じています。例えばプリントデータの処理一つとっても、スクリーン時代から長年手掛けてきた強みがあります。スクリーン製版では色分解というプロセスがありますが、このノウハウを生かし、特定の色味だけを調整するといった対応が可能です。また風合い加工を組み合わせることで、生地を柔らかく仕上げるといったアレンジも出来ます。
こうした対応力も含めてフォレアスの強みを発揮し、フォレアスだけで月1000万円以上のビジネスに拡大したいと思っています。特に顔料インクは昇華転写と比べられることが多く、こことは競合しないゾーンに訴求していきたい。例えばちりめんのような凹凸のある生地は昇華転写では平面につぶれてしまいますが、フォレアスだとこれを維持してプリントすることが可能です。また合成皮革、人工皮革といった特殊な素材にも対応でき、活用を検討しています。

デザイナーと消費者つなぐプラットフォームに
――直販事業の状況は。
髙垣知裕直販事業部本部長 20年に直販事業を立ち上げ、ECモールを通じた生地売りを始めました。3年前には自社でソフトウェアを開発し、お客さんがデザインした柄をオンデマンドプリントできるサービスをスタートしました。これをさらに伸ばしていくため、縫製品も始めています。クッションカバー、シーツなど生活雑貨中心に販売しています。染料インクだと生地がカールする斜行が起こるため、プリント品が展開できていませんでした。フォレアスだと斜行が出ず、寸法安定性もあります。染料インクは蒸し・洗いといった後工程で生地の縮みが避けられず、管理が難しい。フォレアスでは生地へのプリント・乾燥だけで完成しますから生地の縮みを抑えられ、このメリットを生かして製品キット販売など製品のバリエーションが広げられると感じています。
現在、準備中の自社サイトでは、デザイナーとユーザーをつなぐプラットフォーム機能を盛り込む予定です。デザイナーが生地・製品在庫を抱えて販売するのは大変ですが、これを当社が受け皿となり、フォレアスを使って小ロット・短納期で生地や製品キットを販売してもらう仕組みです。当社は社内デザイナーが手掛けたオリジナル4000柄を保有しており、こうした用途で商用利用してもらうことも可能性があると思っています。
お問い合わせ先

京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社
本社所在地:〒540-0004 大阪府大阪市中央区玉造1-2-37
https://www.kyoceradocumentsolutions.co.jp/

和歌山染工株式会社
本社所在地:〒640-8344 和歌山県和歌山市納定32番地
大阪営業所:〒541-0052 大阪府大阪市中央区安土町3丁目4番5号本丸田ビル7F
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