和紙で作られたシューズ「Tanuki」誕生から10年、ドイツ発「Wildling Shoes」がアニバーサリーイベントを開催(宮沢香奈)

2026/08/21 06:00 更新NEW!


6月27日、ドイツ・ケルンにて、ドイツ発のベアフットシューズブランド「Wildling Shoes(ワイルドリング・シューズ)」主催のイベントが開催された。Wildling Shoesは、アナ・ヨナとラン・ヨナ夫妻が「裸足のような感覚で歩ける靴を作りたい」という思いから2015年に設立し、子供から大人まで幅広い世代に向けたベアフットシューズを展開している。

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本イベントは、Wildlingが手掛ける和紙生地を用いた超軽量シューズ「Tanuki(タヌキ)」の発表から10周年を迎えたことを記念して行われた。この日は、ヨーロッパを襲う熱波の影響で38℃を記録する猛暑となったが、会場には多くの関係者やゲストが訪れ、大盛況となった。


Tanuki誕生の背景には、日本の優れた技術が深く関わっている。大阪に本社を構えるITOI生活文化研究所の創設者で、「Itoitex(イトイテックス)」を立ち上げた和紙生地の第一人者として知られる糸井徹氏と出会ったアナとランは、シューズ用の和紙生地の開発を依頼。富山県に所在する細川機業株式会社の特殊交織技術によって、本来は伸縮性のない和紙にストレッチ性を加えた生地を完成させることに成功した。

こうして生まれたTanukiの和紙生地に使用されている紙の素材は、エクアドル産のアバカ(マニラ麻)でバナナに酷似した多年生植物。外皮の内側にある繊維は長く丈夫なため、シューズに使用する和紙の素材として最も適しているという。シューズの重さはわずか56g〜151gと軽く、通気性、吸放湿性、耐久性にも優れており、素足で履いた際のフィット感も心地良い。


ブランドのスピリットアニマルであるキツネのモチーフや和紙をイメージしたデコレーションが至るところに施されたイベント会場には、和紙生地がどのように作られているのか、その工程が分かるようにマニラ麻の繊維や和紙生地の見本が展示された。この日のために日本から来訪していたITOI生活文化研究所代表・久保田大三氏は、自らゲストからの質問に答え、説明する姿が印象的だった。


Tanukiをはじめ、スリッポンタイプのKamiなど和紙生地を使用したシューズの試着販売やスタッフが日本で買い付けた豊富な種類のビーズをシューレースにデコレーションできるワークショップコーナーも人気を集め、子供たちが楽しそうに装飾する姿が微笑ましかった。ドイツでは飲食店にエアコンが常備されていないのが通常のため、ゲストには和紙をイメージした白い扇子が配布される気遣いやヴィーガンフードのケータリングも提供された。


他にも、現在グッゲンハイム・ビルバオにて回顧展が開催中の日系2世アメリカ人彫刻家Ruth Asawa(ルース・アサワ)の作品をプリントした限定モデルが、ソックスやバッグとともにお披露目された。アサワが1948〜49年頃に制作した《Untitled (BMC.144, Dancers)》のディテールをシューズのアッパーにプリントしたグラフィカルなデザインが印象的で、日本人ダンサーをモデルにしたポップも掲示されていた。

Tanuki × Ruth Asawa限定モデル

代表のアナは、Tanuki誕生までの道のりやブランドの成長を振り返り、10年という節目を迎えられたことへの喜びと、スタッフや協働者への感謝の気持ちを述べるスピーチを披露した。Tanukiというネーミングはランが発案したという。ブランドのモチーフであるキツネの友達であり、日本のタヌキを意味している。Wildlingは実店舗を持たず、オンラインのみで販売を行っているが、すでに世界中で50万足以上の販売実績を誇る。今後は日本市場にも展開していきたいと考えているようだ。

Wildling Shoes代表アナ・ヨナ
ITOI生活文化研究所・代表・久保田大三(中)、細川機業株式会社・代表・細川浩太郎(右)

ITOI生活文化研究所代表の久保田氏は、10年前にアナとランとケルン大聖堂のカフェで会った思い出を語り、Tanukiの誕生と成長を祝えたことが嬉しいと述べた。また、次の10年に向けて和紙の可能性をますます追求し、大きな飛躍を共有したいとも語る。ITOI生活文化研究所は、オリジナルのアパレルライン「Maison ITOI」を展開しており、デジタル化が進む世の中で紙を使う意義も発信していきたいと国内外で市場を広げている。

私自身もTanukiのブラックカラーを持っているが、手にした時の軽さはもちろん、履いた瞬間に足にぴったりとフィットし、その感覚がとても心地良くて驚いた。さらに、折り曲げてシューズバッグや小さな巾着袋に収納して持ち運べる便利さにも感心した。ドレスアップが必要なパーティーでは、ヒールから履き替えられるようにバッグに忍ばせ、飛行機で移動する際もTanukiが一足あればスリッパは不要になる。今後もさまざまな場面で活躍するシューズになることだろう。

(Photo : Wildling Shoes)

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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