【記者の目】DtoC戦略加速するスポーツメーカー EC注力し卸売事業改善

2021/04/29 06:28 更新


Medium the onitsuka   beijing kv

 国内スポーツメーカーはDtoC(メーカー直販)戦略を加速している。世界的なコロナ禍により取引先小売店をはじめとする店舗休業などからEC売上高が伸びたが、収益性の低い卸売事業を改善したい意向だ。コロナ禍が長引く中で、過度な直営出店は見直し機運が広がっており、その分、ECへの傾倒が目立っている。各拠点に自社ブランドのイメージを発信する旗艦店を配置しつつ、EC比率を高めようとしている。

【関連記事】【記者の目】コロナ禍で多様化するSNS活用 最適手段で情報伝達

 アシックスはこのほど発表した「中期経営計画2023」で、『直営店』を収益性を改善する事業に挙げた。ECを軸としたオムニチャネル戦略を中心に据え、直営店の役割を見直す。コロナ禍の影響を踏まえて直営店を厳選し、不採算店のスクラップを進め、収益性を向上させる。店舗顧客の「ワン・アシックス」会員化とパーソナライズされたサービスの提供によって、デジタルと連携した体験を提供する。アウトレットストアも顧客とのタッチポイントとして広げつつ、チャネル横断で在庫消化を促進させる。

店舗形態を分類

 特に成熟した日欧米市場では収益性の改善が課題とする。昨年12月には米ニューヨーク5番街の旗艦店も約23億円の特別損失を計上してでも閉店するなど、店舗数は減らしていく方針だ。店舗も従来の同じような内容ではなく、ブランドの世界を見せる旗艦店やランニング専門店などと分類していく。

 一方で、中華圏ではさらに成長を加速させる。出店地域も、これまでの大都市から地方都市に広げ、現地パートナーも活用し、中国生産・販売によるスピーディーな拡大を目指す。また、将来に向けた成長市場としてはインドやインドネシア、中東地域への投資は広げる。スポーツとは別に、ファッションブランド「オニツカタイガー」では昨年12月にミラノに旗艦店を出店、今年1月にはラグジュアリーライン「ジ・オニツカ」を中国・北京に出店するなど引き続き世界の主要都市での出店を計画している。

アシックスが今年1月に中国・北京に初出店したラグジュアリーライン「ジ・オニツカ」

 ミズノも昨年、欧州初の旗艦店「ミズノトリノ」やタイで2店目の直営店などグローバル各拠点に旗艦店を出店した。日本でも「ミズノトウキョウ」の改装オープン、ゴルフに特化した「ミズノゴルフヨドヤバシ」などユーザーとの接点を広げ、ブランド体験を向上させてようとしている。しかし、コロナ禍もあり、「無理して増やす気持ちはない」として、新規出店に関しては慎重に見極めている。ECは特にオウンドサイトに力を入れ、マウスカバーのヒットで、これまでリーチできていなかった層も取り込み、顧客作りを進める。

直営店とECを拡大

 DtoC戦略に積極的なのは、デサント。コーポレートブランド「デサント」で国内で昨年末に17店だったものを早期に50店を目標としている。中国や韓国では直営店ビジネスが中心なのに対し、日本では卸売事業が売上高の8割以上を占め、収益性の向上が課題とする。ECも公式オンラインストアを昨年秋に刷新し、今期(21年3月期)は2倍の売上高比率10%近くに上昇する見込みだ。昨年からはオウンドメディアも配信しており、3年以内にEC比率20%を目指している。

 中国では最大手スポーツメーカーのアンタと提携して、デサントブランドを急拡大したが、ECの拡大もあり、実店舗の出店ペースはやや減速してきている。中国では昨年10月にライフスタイル提案型「デサントブラン」も北京に初出店した。

デサントは20年10月に北京でライフスタイル提案型「デサントブラン」を初出店した

 ゴールドウインは直営店と卸先店舗、ECによる連携を強化している。スポーツ専門店チェーンなど卸先店舗ではアウトドア関連が好調で、ECは昨年のリニューアル以降、直営店との連携が進み、購買行動の変化に柔軟に対応している。同社は自主管理売り場の比率が高いが、コロナ禍では首都圏の直営店が休業となる中、地方の卸先店舗でアウトドア売り場が健闘した。引き続きアウトレットも活用した実需型ビジネスモデルの磨き込みで、コロナ禍でも持続的成長を目指す。

 また、コーポレートブランド「ゴールドウイン」では昨年10月に海外2店目、欧州初となる直営店をドイツ・ミュンヘンに出店した。今後もオリジナルブランドとしての拡大と海外事業の積極推進を掲げる。

 ナイキやアディダスなど海外スポーツメーカーもコロナ禍でECを中心としたDtoC事業がけん引している。ナイキは昨年から卸先は少数の戦略的パートナーに絞り込んだ。日本でもメーカーによるDtoC戦略が進展しそうだが、既存の卸売事業も依然として大きく、卸売事業の収益改善と直営店とのすみ分けが必要となりそうだ。

小田茂=大阪編集部スポーツ担当

(繊研新聞本紙21年3月1付)

関連キーワード記者の目


Bnr counter agreement
Bnr denshiban

この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事

Btn gotop