21年春夏オートクチュール 手仕事を背景に作りこみながらそぎ落とす

2021/02/01 06:29 更新


 21年春夏オートクチュールがデジタル配信を通じて発表された。それぞれのブランドの持つ背景やオリジンを感じさせる新作が揃う。中でも、ヴァレンティノはいつもクチュールをモダンにしようと試みている。

(小笠原拓郎)

 ヴァレンティノはローマのコロンナ美術館での無人のショー映像を配信した。「CODE TEMPORAL」と題された映像は、マッシブアタックのロバート・デル・ナジャとのコラボレーションによるものだ。

 ゴールドの仮面のようなメイクのモデルたちが新作をまとって静かに歩く。春夏はヴァレンティノの手仕事を背景にしながらも、いつになくシンプルに見える。縦長のラインにすっと落ちる布の流れ、そこに刻まれたスリットのようなカッティング。作りこみながらそぎ落とす。そのカットの潔さが新鮮だ。ショールのように肩を包むトップはどうやってボディーとくっついているのかがわからないテクニック。ニットと組み合わせたベージュのフレアスカートは、裏地のピンクがアクセント。キャメルベージュのダブルフェイスからのぞくミントグリーンの裏地にどきりとさせられる。シンプルなカットを際立たせるのはゴールドやピンクのメタリックなブーツ。コサージュ状の装飾をのせたテーラードコートなど、春夏はウィメンズだけでなくメンズラインも登場した。「儀式、プロセス、クチュールの価値。それらは時代に左右されることがありません。思考する心、ものを生み出し価値を与える手。これは人間を称えるコレクション」という。

ヴァレンティノ
ヴァレンティノ
ヴァレンティノ
ヴァレンティノ

 例年と同じようにオートクチュールのスケジュールのトップを切ったのはスキャパレリだ。クチュールの製作現場と新作を組み合わせた映像を配信した。エルザ・スキャパレリがシュールレアリスムをコレクションに取り入れたこともあるだけに、今シーズンもコンセプチュアルなラインが充実した。マッチョな人体のコルセットドレスや女性のヌードのコルセット、大ぶりなイヤリングとシンクロするかのようにドレスに立体的な装飾がのせられる。南京錠の刺繍のデニムのセットアップには大きな南京錠型バッグを組み合わせる。肩からボディーへ鮮やかな金髪を刺繍したブラックドレスは艶やかなイメージ。ブラックのジャージードレスは金色の乳房から授乳される金色の赤ちゃんのようなオブジェのパーツが付く。

スキャパレリ
スキャパレリ

 アレクシ・マビーユは、構築的な縦長のラインを強調したドレスを揃えた。ベアトップや深い襟ぐりのドレスなど、デコルテを意識させるデザインが目立つ。マビーユのアイコンともいえるボウのディテールはフーデッドドレスのモチーフとなった。オーガンディのような透ける素材にフラワープリントを重ね、そこにフラワー刺繍を重ねていく。

アレクシ・マビーユ


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