【ファッションとサステイナビリティー】アーバンリサーチ 廃棄衣料再生や産学連携促進 社内外で理解と共感拡大

2022/09/30 00:00 更新


「国際サステナブルファッションエキスポ」では異業種からの引き合いも

 環境社会課題の改善に向けて多方面に活動するアーバンリサーチ。21年度は廃棄衣料リサイクル「コンポスト」や産学連携プロジェクトを中心に取り組みを広げた。「すごいをシェアする」との企業理念にもとづき、現場社員の声を拾い上げ、企業一丸となり活動を推進している。

異業種からの協業の声

 コンポストは18年に第1弾を発売した。21年度はグッドデザイン賞を受賞するなど、認知も高まっている。昨年にはBtoB(企業間取引)事業も始めた。自社以外の小売り企業での販売や、学校や行政でのSDGs(持続可能な開発目標)関連行事への参加で、他社とともに環境課題に向き合いたい思いが原点だ。昨年10月と今年4月には合同展「国際サステナブルファッションエキスポ」に出展し、異業種からの引き合いも多かった。

 産学連携プロジェクトの一例では、昨年9月に防災とファッションを考える「BOSAI FASHION LABO」を立ち上げた。大阪府主催の「万博×環境 未来を描こうプロジェクト」との協働。これに取り組む若い学生の「アーバンリサーチと協業したい」との声がきっかけだ。初年度は全国の高校生と大学生を対象に、防災に役立つアパレル企画をテーマにコンペティションを行った。

 ほか、JICA(国際協力機構)関西と大阪市立新巽中学校による「SDGs学習プロジェクト」にも参加。オンライン交流会で同社のSDGsの基本方針「3C」や取り組み例を紹介し、課題を挙げ、衣料廃棄で何ができるかを一緒に考えた。それから、交流会を機に行動に移したことや課題解決策のプレゼンテーション発表と企業からのフィードバックに加え、コンポストの制作現場の見学などもした。

 サステイナブル(持続可能)な活動を推進する団体への参加も増やしている。国連が提唱する「国連グローバル・コンパクト」(UNGC)に署名し、参加企業として登録され、ローカルネットワークである「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入。「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」にも正会員として加盟した。

 今後、注力するのは「ジャパン・メイド・プロジェクト」だ。地域活性化を目的とし、3Cの一環として取り組んでいる。これまではブランドごとに企画していたのを、今後はSDRに集約して「地元を愛してやまない人と、その土地の良さを発信したり、課題を改善していきたい」と考える。契機はコンポストで出店した国際サステナブルファッションエキスポで、来場者から「協力して何かできないか」との声が多くあった。

社内での啓蒙活動も積極的にしている

社内啓蒙活動にも力

 これらSDGsの活動の背景には従業員の思いがあり、企業はそれに応えてチャンスを与え続けてきた。コンポストや羽毛を回収・再利用する「グリーンダウンプロジェクト」への参画など継続して取り組んでいる活動の多くは従業員の提案がきっかけだったという。

 執行役員SDR部長兼経営企画部部長の萩原直樹さんは「問題意識を持って声を挙げた時に、やらせてくれる社風がある」と話す。実績を重ねながら、共感の輪を広げてきた結果が現在につながっている。まさに、竹村幸造社長がよく口にする「伝統は革新の連続」だ。

 企業は従業員の主体性を促すために、SDGsを推進する体制を整えてきた。3Cを定め、直近では新たに3カ年計画も作成し、企業としての姿勢や全社で向かう方針を明確に示した。

 社内の啓蒙(けいもう)活動では、20年6月から毎週配信している社内報「SDR通信」に加え、昨年には新たにSDGsの社内勉強会も始めた。店舗で働く従業員が見られるようにオンラインにし、これまで4回行った。同社にとってのSDGsの定義やハンディキャップを持つ人を雇用することの現状などを話した。

 参加した従業員からは好評だ。「SDGsへの理解や考えは一人ひとり異なり、それがいい面でもある。活動が重荷になるのは良くないので、色々な解決策があるんだという気づきは前向きな側面」と萩原さん。今後も社内での理解を促進すると同時に、現場の発想を新たなビジネスに生かし、大きな道にしていきたいという。

世界が広がってきた

萩原直樹執行役員SDR部長兼経営企画部部長の話

萩原さんが事業構想大学院大学で講演した際の様子。「社会人学生の熱意に活動を後押しされた感じだった」という

 昨年度は企業で二つの団体に加盟しましたが、他社と課題を共有したり、勉強会をしながら議論を重ねる中で学びや気づきを得る機会になっています。18年から自分たちなりに考えてやってきましたが、世界がより広がってきたなと感じます。この学びを社内でも共有して活動への理解や参加を一層促せれば。

 自身では昨年12月に事業構想大学院大学でコンポストの活動について講演しました。社会人学生の感度の高さは良い刺激になり、その熱意に活動を後押しされた感じでした。今年2月には古着の回収・販売などをする一般社団法人「ミライバトン研究所」を設立。アーバンリサーチでも今後の重点課題としている、服を長く着てもらえる仕組みを確立したいとの問題意識からです。

 着古した服を送ってくださるお客様からコメントをいただくのですが、それにいつも感動させられています。こうして共感を社内外に増やし、活動を広げていきたいですね。

SDGs活動の経緯

・18年11月 SDR(サステナブル・ディベロップメント・リサーチ)プロジェクト発足。有志で集まった約15人の社員で構成され、サステイナビリティー活動のきっかけになった

・19年12月 SDGsの基本方針「3C」を策定

・20年4月 経営企画部にサステナビリティ推進課を設立

・21年4月 各オフィス、部署にSDGs活動の担当者を配置

・22年2月 SDRを社長直轄の正式部署に。現在、専任5人と兼務5人で、今後人員を増やす計画

・22年4月 企業ホームページのSDGsのページをリニューアル

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