【ファッションとサステイナビリティー】小型温冷機器専用ウェアが相次ぎ登場 省エネの切り札に

2021/07/29 06:00 更新


 ソニーの小型温冷機器「レオンポケット」を装着できる専用のウェア開発が、アパレルメーカー・小売りで相次いでいる。これまで4社・6ブランドが手掛け、着用できるシーンはビジネスからファッション、ゴルフまで広がった。なぜここまで注目されているのか。

 レオンポケットは、直接体表面を冷やしたり、温めたりできるウェアラブルサーモデバイスだ。通電することで片側が冷え、反対側が温まる半導体モジュール(ペルチェ素子)を搭載し、ソニーの熱処理技術を駆使してその機能を維持できるようにしている。肌に接触する冷温部は、優しく、強く冷温を伝え、本体の厚みはわずか1センチ強。重さは92グラム(レオンポケット2)で、スマートフォンより軽く、小さい。温度などの設定は、専用のスマートフォンアプリで行える。

 20年7月に1号機(オープン価格)を発売し、わずか2日で初回出荷台数の1万台が売り切れた。21年4月にはスペックアップした2号機(小売価格1万4850円)を売り出し、計画を上回る販売状況という。

ウェアラブルサーモデバイスのレオンポケット

 アパレルメーカー・小売りでレオンポケット専用ウェアを販売しているのは、表の通り。いずれも体表面を直接冷やしたり、温めたりできるよう後ろ身ごろ上部にレオンポケットが入る専用ポケットを設けている。デバイスの吸排気性能を損ねない通気口や、体を動かしてもフィットする収納仕様、レオンポケットを入れていなくても違和感の無い外観デザインなどの工夫も見られる。

エディフィスのレオンポケット対応ポロシャツ

 専用ウェアの開発が盛んなのは、レオンポケットが建物内部における消費電力の削減につながると見込まれているためだ。資源エネルギー庁や環境省によると、平均的なオフィスにおけるエネルギー消費量のうち、空調が48%を占めており=円グラフ、冷暖房温度を1度緩和するだけで、熱源で消費されるエネルギーは約10%削減できるという。つまり、特にビジネスシーンでレオンポケットの装着者が増えれば、オフィスでの消費電力を減らせる可能性がある。


 ソニーとしてもデバイスの普及には、ファッション企業の力が不可欠と考えている。同製品の開発者であるソニーREON事業室統括課長の伊藤健二氏は、「レオンポケットをガジェットではなく、多くの人のライフスタイルに溶け込むような製品にするには、アパレル企業の力を借りるのが近道。世界的に見ても、空調によるエネルギー負荷は都会のほうが大きいが、都会で過ごすには、スタイリッシュでなければならず、ブランドの力をお借りして対応ウェアを作ってもらう必要がある」と話す。

レオンポケットを開発したソニーの伊藤氏

 ソニーでは今後も、レオンポケットの目指す理念に共感し、ベクトルが合うアパレル企業と組む方針だ。7月下旬には、はるやま商事(「P・S・FA」)とタカキューからビジネスシャツで対応商品が発売される。

TSIで実証実験も

 6月中旬には、TSIの協力を得て、オフィスで実証実験も実施した。「パーリーゲイツ」のレオンポケット専用ウェアを着用したTSIの社員50人が2日間、設定温度を通常時の25度から27度に上げたオフィスで働き、業務への影響を調べた。

 その結果、参加者の44%が「普段と変わらない」、32%が「普段より少しはかどった」と回答。同実験に参加したパーリーゲイツセクション兼マスターバニーエディションセクション営業チーフの米竜也さんは、「いつもなら暑いと感じる空調の設定温度でも、暑さを感じず快適に過ごせた。背中への違和感もない」と話した。

TSIで行われた実証実験

(繊研新聞本紙21年7月28日付)

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