アクセサリー製造販売、スプリング(大阪市)のブランド「メイグローブ・バイ・トライバラクス」は、インドの精細な手仕事を特徴とする。過酷な環境に置かれているインド農村部の女性に就業機会を提供し、生活水準の向上や自立の支援を続けている。物があふれる日本では販売するだけではなく、ブランドの背景を発信する取り組みに力を入れている。
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初めてインドに行ったのは05年。当時はタイや韓国で物作りをして、ビジネスは順調でした。でも、他社が入り込んでいない、ハンドリングしていないところへ行けば、差別化できると考え、インドへ行ったんです。
紹介された村はデリーから北へ車で2時間かかる田舎。女性たちの刺繍や編み物の技術があることは分かったけれど、製品としては優れていなかった。でも、その後何回か村を訪れ、半年後にはここで作ろうと決めました。
日本の検品の厳しさや納期が大事なことなどを伝えましたが、まあ大変でした。設備のないところで作るのて、製品が砂まみれになっていたり、何度も無理と思いました。ただ、従来のように韓国で作っても価格競争になるし、やっぱり唯一無二のブランドにするには強みは必要と、腹をくくりました。
結局、日本の百貨店に並べられる品質にするのに、5年くらいかかりました。当時、その村は男性も含めて仕事がなく、女性は子を産み育てることだけが幸せと考えていました。現実には自宅にはトイレすらなく、家庭内暴力や犯罪もあり、女性が尊厳を持って生きられず、逃げ場すらなかったのです。
私たちの仕事をするようになり、彼女たちは初めて現金収入を得られるようになりました。彼女たちの母も祖母も働いた経験はありません。収入が家計の足しになり、好きな物を少しは買えるようになったのは大きな変化です。
彼女たちがきちんとしたものを作れるよう、現地パートナーと協力して14年から工場を作り始めました。コロナ禍もあり、完成度は7割ほどですが、明るい室内で、トイレも整備しています。健康を維持するため、目の健診もするようにしています。
元々は専門店などへの卸売りが中心でしたが、このところは自社サイトのECが伸びています。ECサイトには、長い年月をかけてインドの女性たちと独自のものを作り上げてきたことなどを紹介しています。
昨年は芦屋(兵庫県)に直営店「メイグローブラボ」を出しました。12月にはジュエリーボックスのワークショップを初めて開き、私がインドで経験してきたことを直接伝えました。世の中には安いアクセサリーはいっぱいあるけれど、心のある物は大事にするし、物を選ぶ基準になることを訴えていきます。
(繊研新聞本紙24年3月27日付)