【ファッションとサステイナビリティー】ESGって何? オウルズコンサルティンググループ プリンシパル大久保明日奈さんに聞く

2022/06/16 05:27 更新


 最近よく耳にするESGとは何か? CSR(企業の社会的責任)、SDGs(持続可能な開発目標)などと類似した使われ方をされるが、どう違うのか。オウルズコンサルティンググループのプリンシパルの大久保明日奈さんに聞いた。

Q.ESGとは何ですか?

 Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治の頭文字をとったものです。投資の世界で生まれた言葉で、投資先企業が環境・社会・ガバナンスに取り組んでいるか、持続的に価値を向上できる企業かを考えましょうという意図から生まれました。

 昨今では、投資だけでなく、ビジネスの仕方にもESGを重要視する「ESG経営」という言葉も使われるようになってきました。

Q.世界的にみて、日本はESG投資・ESG経営が遅れているのでしょうか?

 欧米が進んでいるとは確実に言えますが、日本がまったくできていないわけではありません。責任ある投資をすすめるPRI(責任投資原則)に署名している金融機関も増えています。20年の日本のESG投資額は18年比で30%以上増えました。財務情報と非財務情報をまとめた統合報告書の開示企業も、21年に700社を超えました。

Q.取り組むメリットは?

 新しい市場創造、ブランド価値・企業価値の向上、人材をひき付ける。この三つが大きいです。EUでは早期に再エネにかじを切ったエネルギー企業が先行して市場を取るなど、新しいビッグマーケットに入り、成長につなげた事例があります。

 サステイナビリティーに対応しているかは、投資家だけでなく消費者からも見られています。アパレルでは、大量生産・大量消費型と思われると、避けられるケースがあります。同じようなものであれば、フェアトレード(公正取引)やオーガニックコットン、リサイクル素材の物を買いたいという人もいるでしょう。

 人材に関しては、特に欧米の若い世代は、自分の会社が誇れるところかどうかを気にします。日本でもそうした動きがあり、入社の最後の決め手がサステイナビリティー対応であるという時代が来ています。

Q.対応しないと、どんなデメリットがありますか?

 改善を要請されることや取引の停止の可能性があります。

 すでに取引先から脱炭素や人権対応への要請が始まっています。改善要請に対応できれば取引は継続できますが、何もやっていないと取引停止などもあります。上場企業では、投資の引き上げの動きもあります。大企業が変わると商習慣が一気に変わることがあります。中小企業だからといってやらなくて良いとはなりません。

 繊維関連では外国人技能実習生の問題がメディアに取り上げられ、炎上したことがありました。すぐに情報が拡散するのが今の時代です。

Q.社会的価値と経済的価値は両立できますか?

 先進企業が両立へトライしています。社会的価値を無視しても短期的にはビジネスが回るかもしれませんが、まったく対応しないと中長期的には厳しいでしょう。

 人材配置やシステム導入などにコストもかかりますから、バランスも大事です。企業が持続的に成長するためにはコストを抑え、収益を上げることが必要です。

 ただ、社会情勢が変わる中、社会価値への対応ができないとゆでガエルになってしまうのではないかと思います。これまではできていた取引がある日できなくなってしまったり、消費者から選ばれなくなってしまうこともあります。

 欧米企業は、出来ていることも出来ていないことも伝えています。

 日本企業は真面目で、出来ていないことを言うのをはばかるかもしれませんが、今100点でなくても改善を進めている企業であれば、一緒にやっていきましょうということになるでしょう。現在の立ち位置と、目指すゴールに向けたストーリーを示すことで、納得感が高まります。

オウルズコンサルティンググループ プリンシパル 大久保明日奈さん

(繊研新聞本紙22年6月16日付)

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