【ファッションとサステイナビリティー】新たなマーケティングで次世代ビジネスモデルを構築 隠れた売れ筋を個人の購買行動にマッチング

2022/05/26 05:30 更新


フルカイテン・瀬川社長(写真左)プレイド・高柳取締役(写真右)

 大量の衣料品廃棄をいかに回避するかはサステイナビリティー(持続可能性)社会の実現だけではなく、企業の業績改善の観点からも喫緊の課題となっている。在庫分析クラウドシステム「フルカイテン」を小売業に提供するフルカイテンと、CX(顧客体験)プラットフォーム「カルテ」を提供するプレイドは、小売業の販売促進に向けたシステム開発を共同で行っている。小売企業が、データに基づいて商品が売れない原因を考察し、顧客一人ひとりに合わせて最適な販促施策を展開できるようにすることを目的に、両社は実証実験を開始、今年7月のローンチを予定している。

在庫問題は共通の課題

 ――今の市場、事業環境は。

 高柳氏 当社が提供するカルテはアパレル企業での採用が広がっており、プレイドの顧客基盤の約12%を占めています。多くの企業にとって在庫問題は共通の課題でもあり、業界としても待った無しで解決しなけばならない局面にあります。一方で、企業やブランドのファンをどう育てていくかという視点も不可欠です。サステイナブルやエコロジーを意識した取り組みを行わない企業は、ファンの獲得や醸成が難しくなっていくでしょう。ですから、顧客観点からも在庫問題への取り組みは切実になっています。

 瀬川氏 大量廃棄問題をはじめとするサステイナブルやエコロジーへの取り組みは、ある種のグリーンウォッシュ的なかたちで現れて、業界全体として「取り組まないといけないが、もうからない」との見方が数年前までありました。しかし、コロナ禍を切っ掛けにして総じて在庫を減らしていった。それによって大手上場アパレルを中心に利益ベースでV字回復を果たしています。大量廃棄を生まない在庫抑制が、業績回復に直結することが数値として明確に実証され、企業側がビジネスとして捉えはじめたのではないでしょうか。

フルカイテン・瀬川社長

 ――企業の社会や業界に対する存在意義は何ですか。

 高柳氏 プレイドの社名は「PLAY&AID(楽しみながら、役に立つ)」を由来とした造語です。アパレル業界に従事する人たちは本来、ファッションが好きで、ブランドのファンに喜んでもらえることを求めているはずです。当社のミッションは「データによって人の価値を最大化する」であり、提供するCX(顧客体験)プラットフォームによって、在庫問題から解放して、人でなければできない仕事に力を注げるようにすることが私たちの役割だと考えています。

 瀬川氏 「世界の大量廃棄問題を解決する」が当社のミッションです。その上で、現時点で重視するのは、アパレル業界全般の小売業界に対して「粗利経営への変革を促す」ことです。フルカイテンは現在、約200ブランドで導入されており、これらの各ブランドのデータを分析すると、中央値で全SKU(在庫最小管理単位)のうち約20%で、全粗利の約80%を生んでいることが分かりました。

 ここに業界の課題があると見ています。つまり、売れ筋以外のSKU80%の商品を分析して、利益を生み出す商品を見つけ出すことが利益増において大事だと考えます。当社はこの粗利経営に向けた、在庫分析の支援を広げていきたい。これはファッション産業における無駄やロスを削減することに資するものだと確信しています。

無駄な値引きを回避

 ――両社が共同開発するシステムの特徴は。

 高柳氏 フルカイテンによる在庫商品データと、カルテの購買行動データを掛け合わせることで、在庫分析から、顧客へのコミュニケーションまでを一気通貫で実現し、最適な在庫評価と、最終消費者の購買体験の適切なマッチングを実現します。商品データと行動データを組み合わせ、丁寧な分析を行うことで、無駄な値引きを回避することができます。具体的には、商品に対して一律に、全ての消費者に向けて同率の割引を行うのではなく、その商品に興味関心を持っている消費者を、カルテの分析によって割り出して、適切な割引率で販売するのです。業界一般に、本来バリューのある商品を、自らバリューダウンしている状況が残念ながらあるのではないでしょうか。適切な人に、適切なプライシングで、良い購買体験を届けることを、フルカイテンと共に実現できることにワクワクしています。

プレイド・高柳取締役

 瀬川氏 フルカイテンによって在庫分析した「隠れた売れ筋商品」に分類された在庫商品に対して、オンライン上のサイトやアプリの訪問者の購買行動をリアルタイムに解析することで、個々人に合った購買体験を設計できるカルテの販促施策を実行し、売れ行きの改善や値引きの抑制がどの程度実現できるかを検証できます。両社の強みを掛け合わせることでアパレル企業に対して有効なデータを提供でき、最終消費者にも購買に向けたお得なオファーができる現在、セレクト系アパレルやスポーツメーカー、大手通販の3社とのPoC(概念実証)を進めており、私たちが想定していた通りの結果が表れています。プレイドと共同開発するこのシステムを通じて、業界の課題解決に広く貢献していきたいです。

 ――共同開発するシステムが広く活用されることで、市場への影響は。

 高柳氏 業界の大量廃棄問題の解決に向けた在庫問題への各企業の取り組みや、粗利経営への変革に向けた課題解決のスピードがアップすると確信しています。

 瀬川氏 これまでは、在庫分析分野はマーケティングの領域とは認識されていませんでした。しかし、売る物がなかったり、商品の提案内容が的確でなければ、マーケティング上の成果が出ない。両社のタッグによって、〝隠れた売れ筋商品〟を可視化することで在庫効率を向上しながら、最終消費者の購買行動の文脈を捉えて適時適品の販売支援を行うことで、マーケティングの概念が次の段階に発展することになると確信しています。

(繊研新聞本紙22年5月26日付)

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