【ファッションとサステイナビリティー】フォーシスアンドカンパニー「アメリス」 ウェディングから多様性を発信

2024/02/28 05:30 更新


 ウェディング関連、コンサルティング事業のフォーシスアンドカンパニーの「アメリス」は性別・国籍・体形・年齢を問わず、すべてのカップルが自由にプランニングできるウェディングブランドだ。23年9月からサービスを始め、2月18日にはコンラッド大阪との協業で、ファッションショーとトークショーのイベントを大阪で開いた。このイベントは、アメリスとコンラッド大阪それぞれの思いから実現した。

(津田茂樹)

選択肢を広げ応える

 アメリスは、性別適合手術を受けて女性となったタレントのGENKING.さんが、LGBTQ+(性的少数者)の結婚には式場や衣装の選択肢などに色々な制限があるとフォーシスアンドカンパニーに伝えたことで生まれた。同社は、この話を聞いたその日のうちに、GENKING.さんが企画に参画するブランドの立ち上げを即断した。

 ブランドの成り立ちゆえか、アメリスはLGBTQ+向けのイメージが強い。事実、開始時の発表会でも、杉元智子マーケティング本部長専務取締役(当時、常務)のあいさつや、GENKING.さんのトークセッションにLGBTブライダルプランナーの桜井秀人グリッター代表理事が登壇するなど、ジェンダーレスが強調されていた。

 しかしサービスを始めると、車いす利用者向けのウェディングドレスの問い合わせなど、LGBTQ+以外からの悩みも寄せられた。アメリスには、GENKING.さんの「すべての人のウェディングをハッピーにしたい」という思いが込められている。自らのつらかった経験を元に、社会課題を前面に出さないことも希望している。

 ファーストコレクションからジェンダーレス、トランスジェンダー向け以外に、ボーイズ&ガールズやビッグサイズ体形、シニアカップル向けの婚礼衣装が提案されており、多様性に応えるウェディングの可能性を示している。

パンツスタイルも積極的に発信する
ビッグサイズのドレスも

 コンラッド大阪でのイベントはセカンドコレクションとして八つの新作が披露された。新作はファーストに見られた女性のタキシードやパンツスタイルはなく、白が主流とされるウェディングドレスに対し、華やかなカラーの提案で選択の幅を広げようとしている意思が見えた。

アメリスが提案するガールズ&ガールズカップルのウェディング衣装。アメリスは主流の白以外にも様々な色を揃える

固定観念を脱し次へ

 杉元専務は「日本では制服、企業ユニフォームでも女性がパンツスタイルを選べるようになったのに、ウェディングドレスはボリュームのある白いものがほとんどで、選択肢が限定的で遅れている」と指摘する。ファッションとして決まったものだけでなく、自分らしいスタイルを楽しむのがアメリスの根底にあるコンセプトだと強調する。

杉元フォーシスアンドカンパニーマーケティング本部長専務取締役

 コンラッド大阪の新貝惠以子営業部副部長・大阪婚礼統括支配人はこのアメリスのコンセプトに共感を覚え、協業イベントを進めた。単なるウェディングイベントでは限られた世界になる。性別、年代、体形を問わず、どんな人でも、個性を発揮して楽しめるアメリスは、多様性を重視するコンラッドホテルの姿勢に合うものだと認めた。

 新貝支配人はホテルウェディング市場が縮小した要因を「ウェディングとはこうあるべきという固定観念が強すぎて、次のステップに踏み込めない」ことにあり、ホテル側が多様化したニーズに対応できていないからだと見ている。

新貝コンラッド大阪営業部副部長・大阪婚礼統括支配人

 コンラッド大阪のLGBTQ+への配慮はかなり進んでいる。だがそれは多様性の一つに過ぎない。イベントは多様性を大切にする姿勢をアピールする狙いがあった。また「LGBTQ+の課題より多様性を重んじるGENKING.さんの思いもマッチしたように思う。私もLGBTQ+以外の人のイベントではないという見せ方は避けたかった」と新貝支配人は語る。

多様性の大切さを伝えるイベントを企画した3人(左から杉元さん、GENKING.さん、新貝さん)

 杉元専務は「ウェディングは世代を越えて行われる究極の持続可能だと思う。すべての人に幸せを与えたいとするアメリスの多様性のテーマやコンセプトに強く共感し、歓迎してもらえたことをとてもうれしく思う」と協業に感謝の意を表す。

 杉元専務が語った男性カップルの話が印象に残る。2人とも袴姿で挙式したいと願ったが、ほとんどの神社で断られた。結局、受け入れてくれたのは海外生活の経験があり、同性婚を当たり前に思う女性が宮司の神社だったらしい。記者が多様性の大切さを広めるのは女性の力かもしれないと言うと、杉元、新貝両氏は大きくうなずいて笑っていた。

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(繊研新聞本紙24年2月28日付)

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