ブランドメッセージとして〝エシカル〟を掲げる「アースミュージック&エコロジー」をはじめ、企業単位でもサステイナブル(持続可能)な活動を強化しているストライプインターナショナル。19年度はSDGs(持続可能な開発目標)を経営戦略の一つに設定し、2月にはSDGs推進室も設けた。ファッション小売業としてこうしたテーマにどう向き合っていくのか、石川康晴社長に聞いた。
●変わるリテラシー
――現状をどう見る。
CSR(企業の社会的責任)からSDGsへと、世の中の流れが変わってきています。当社では、これまでもCSRの一環として海外での緑化活動などを行ってきました。これは、本業で得た利益を使って社会課題を解決しようとするものでした。一方、SDGsでは利益を上げながら課題解決もしていくという違いがあります。
消費者のサステイナブルに関するリテラシーも急速に上がってきています。中高校生も授業でSDGsについて学んでおり、彼らはやがて社会人になっていく。サステイナブルな取り組みをしている企業は生き延びるし、そうでない企業はマーケットから退出させられる、そういう時代が来ると思っています。
サステイナブルイコール、エコや環境のことだけだとは考えていません。持続可能な地球を作るためには貧困、人権、環境、地域の持続性、高度な教育など、同時並行的に企業がトライしていく必要がある。もっと概念を広げていきたい。例えば地域の持続性という意味では、地元・岡山では07年から「エコクリーナーズ」という清掃活動を継続的に行っています。最近では「メゾン・キツネ」のファクトリー併設型カフェを岡山市内に誘致したり、個人としては国際現代美術展「岡山芸術交流」の総合プロデューサーも務めています。
●無駄な在庫減らす
――既存事業での取り組みは。
今期、在庫削減を掲げ、実際に約2割減らしました。アパレル業界は廃棄率が高すぎる。世界で最も捨てない会社、在庫管理の優れた会社を目指したい。それがROA(総資産利益率)や利益にもつながります。テスト的導入・検証を経て、AI(人工知能)とBI(ビジネスインテリジェンス)を活用した在庫や値引き率の最適化に取り組んでいます。
結果、上期(19年2~7月)の売上高は約6%減でしたが、営業利益は倍以上となりました。無駄な在庫が減れば物流コストが減り、販売員の作業も軽減されます。値引き率も、バーゲン後半戦で75~80%引きしていたのが60%引きほどに改善されました。
――商品の的中率も重要。
AIを踏まえて当初は、利益は倍増で売上高は落ちないという見立てでした。結果、数%の減収という数字をどう見るのか。我々が失敗したのが、在庫を一律で2割減らしたこと。売れそうなもの、普通のもの、売れないものも全て2割減らしてしまった。結果、売れ筋商品は不足し、売れない商品が残った。
今後は品番数を削減し、そのなかでメリハリを付けることで、売れ筋商品の販売機会ロスを防ぎたいと考えています。オフィスの家賃や人件費などの固定コストは変わらないので、トップラインを上げていく必要がある。
ファッションレンタルのサブスクリプションサービス「メチャカリ」も、新品を貸して返却商品はユーズドとして販売するというビジネスモデルの点で貢献できる。購入したユーズドの服をいずれフリマアプリで売る人もいるでしょう。
例えば当社がこうした運営企業と組んでクーポンを配布するなど、シェアの促進には出口まで設計することが大切です。
●他社と生地をシェア
――素材についての考え方は。
オーガニックコットン、麻、「テンセル」などのセルロース繊維、合繊メーカーのリサイクル素材に注目しています。コットンは今後4分の1程度をオーガニックにシフトしていきたい。素材の課題はロットとコスト。企業を超えた共同配送などの動きはありますが、共同で生地を使うフェーズに持っていきたい。エコ素材を使った服を価格を抑えて提供するために、例えば当社と競合他社で同じ生地をシェアしてもよいのでは。生地が同じでも、デザインで差別化すれば済みます。
――商品の周辺も改善できることがある。
9月に、全国の店舗などでごみ箱ゼロチャレンジを行いました。ごみ箱を撤去するかわりに〝可視化袋〟を置き、ごみを細かく種類ごとに分け、どんなごみが多いかを調べたのですが、長年この商売をやってきた私も驚いたのが不要レシートの多さ。大半のお客様にとってごみになっている。必要なお客様にだけ渡す、電子化するということも考えていきたい。
ほかに見直したいのが、商品を入れている透明の袋。習慣的にどの商品にも使っていましたが、しわになりやすい素材のブラウスはともかく、ローゲージのニットやトレーナーでも本当に必要なのか、考えたい。
この業界で、何十年も前から変わらない慣習が意外に多いことにも改めて気付かされました。我々は評論家になるのではなく、今後も良いことを確実に実行に移していきたいと思っています。
(繊研新聞本紙19年12月4日付)