Z世代のエシカル団体が集う「エシカルエキスポ」 総合プロデューサー飯田貴将さんに聞く

2023/04/24 12:00 更新


昔の服を若い世代が購入していく「フロムクローズ」のショップ

 「エシカルで、もう一度日本を世界へ」を掲げ、Z世代によるエシカル(倫理的な)団体が集う祭典「エシカルエキスポ」が6月10、11日、グランフロント大阪とオンラインで開かれる。着なくなった服を回収し、服にまつわるストーリーとともに売る店「フロムクローズ」を運営するフロムクローズ共同代表でエキスポの総合プロデューサーを務める飯田貴将さんに聞いた。

もったいない!

 ――エシカルに関わるきっかけは。

 両親が共働きだったため、子供の頃はよく祖父母と過ごしていました。小学3年生のときにご飯を2、3粒残したら、「もったいない!」と祖母に首根っこをつかまれ、外に投げ出されました。たくさんの人が手をかけて育てた米に対する配慮がない、と。怒られたことに反発する気持ちはありつつも、もったいないというのは素敵な考え方だなとも思いました。

 何か事業を始めたいと思っていた大学卒業後、オーダースーツ事業を行う人に話を聞く機会がありました。その方は終活の断捨離の手伝いとして、服の回収などもしていました。

 子供の頃、祖父が着ていた肩パッドのしっかり入ったジャケットや太いスラックスを、格好良いと思って見ていました。昔の服は良い素材を使い、高い縫製技術で作られたものが多い。そうした服がタンスに眠っていたり、捨てられたりしている。それを回収して販売できないかと思い21年8月に立ち上げたのが、フロムクローズです。

 回収に出向くと、「初任給で買った服」「〇〇へ着て行った」など、服との思い出話をたくさんしてくれます。心温まる服との思い出話を販売時に伝えれば、より服を大切に思ってくれるのではないか。そう考え、思い出話や購入年代を書いたタグを付けて服を売っています。

 大学時代はSDGs(持続可能な開発目標)とかエシカルとか、意識高くて、正直しんどいと思っていました。フロムクローズの事業も当初は、「自分たち」と「客」という視点しかなかったのですが、あるとき「社会課題解決にもつながる」と言ってくれる人がいて。三方良しにつながる、素敵なことだと思うようになりました。

点から面へ

 ――エキスポ開催の経緯は。

 最初は飲み会ベースで3~5人で話していたところに、だんだんと人が増えてきました。集まってきた学生や社会起業家は、それぞれ「点」で活動しているので、声が企業や社会に届かない。「点」を「線」にし、「面」にできれば、価値提供の場ができるのではないかと、一般社団法人を立ち上げました。このコミュニティーで世の中にインパクトを与えるためエキスポを開き、エシカルが格好良いことを世界に発信しようとしています。

 エキスポに関わっているのは学生や社会起業家の約50団体・1000人です。関西中心で、沖縄、徳島、東京、宮城などの学生もいます。実行委員長はじめ、ほとんどのスタッフが大学生です。

 エシカルはふわっとして分かりにくいところがありますが、「もったいない」「足るを知る」「お互い様」「おかげ様」といった日本の美徳文化がエシカルの本質に近い。エキスポでは、「若者から、美徳文化のリバイバル」というコンセプトもアウトプットしていきます。

 ――初回開催後は。

 1回で終わったら社会は変わらない。来年は大阪と東京同時開催、26年には7都市、30年には47都道府県で同時開催することを考えています。地域ごとに課題は異なります。各地域の課題に向き合うイベントを開催することで、ムーブメントでありマーケットになってくるかな、と。若者が熱狂することで、企業も乗ってきて、社会的な商品が売れることを証明できれば販売する企業も増える。購入者を増やすことはもちろん、プレイヤーも増やしたい。

 その先は海外開催を構想しています。

グランフロント大阪で6月開催

■エシカルエキスポ

 6月10、11日、グランフロント大阪のナレッジプラザ、ナレッジシアター、カフェラボで開く。学生団体は衣食住に関連するブース出展や展示を行う。お好み焼き企業や東大阪のプラスチックメーカーが、学生団体と協業するブースもある。インフルエンサーやアーティスト、ユーチューバーなどを招いたパフォーマンス、ワークショップ、環境活動家のプレゼンなども予定している。リアルの来場者は2万人を想定。ティックトックなどを活用したライブ配信も行う。

会場イメージ


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