繊研新聞が8月末までに行ったアンケートによる最新の「日本の有力店が選ぶ最もクリエイティブなデザイナーランキング」は、海外メンズの動きが見どころとなった。「ルイ・ヴィトン」を手掛けるファレル・ウィリアムスが初めて上位に。海外メンズ1位のジョナサン・アンダーソンと小差で2位となった。ここ数シーズン、メンズ・レディスともに上位のラインナップに大きな変化がないなか、久々のトピックといえる。
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ウィリアムスが評価されたのは、6月の24年春夏パリ・メンズコレクションで発表したルイ・ヴィトンのデビューコレクション。招待客は、ショー会場の橋ポンヌフに向けてセーヌ川を大小の舟で渡るという趣向を経て、シグネチャーの「ダミエ」柄のカーペットが敷き詰められた会場に降り立った。
ランウェーには、様々なダミエをセンス良く散りばめたスーツやストリートスタイルが並んだ。ショーの最後はウィリアムス自身が作った曲を、彼の故郷の米ヴァージニア州から呼んだコーラス団が歌うというスペクタクルなゴスペルライブ。その後もライブパフォーマンスは続き、深夜までにぎわったという。一連の模様をライブ配信でチェックした人も多く、訴求力の高さは抜群だった。今回のランキングはその盛り上がりを反映する形となった。
特に百貨店の期待が大きい。「24年春夏のきらびやかなデビューコレクションは圧巻でした。彼自身を投影したスタイリングはジェンダーフルイドなニュアンスもあり、チームの能力の高さも印象付けた。LVMH帝国の強大さとハイレベルを再認識。セールスにも期待しています」(そごう・西武)。
ウィリアムスは音楽業界で活躍し、アートにも精通して、幅広い交友関係を持つなど、これまでのクリエイターとは違う能力を備えている。その点に注目する人も多い。「ファレル自身の持つ音楽やアートなどからくるクリエイションが反映されたコレクションと、彼が持つセレブリティーコミュニティーがルイ・ヴィトンという巨大ブランドと掛け算することでこれまでにないムーブメントが起きている」(阪急阪神百貨店)。
「デザイン面での斬新さではなく、世の中全体をハッピーなムードにできる人としての魅力に注目。音楽とファッションの融合の体現者になって欲しい」(高島屋)、「話題性も高く、業界全体を引っ張っていく期待を感じる」(パリゴ)といった声などに表れる評価のように、モードの潮目が変わる可能性を秘めている。