ブラザー販売は本体価格200万円の家庭用刺繍ミシンの国内最上位機種「ルミナイアーXP1」を21年1月に発売する。家庭用ミシンは昨年までの苦境から一転し、今年は巣ごもり需要で売り上げを大きく伸ばしている。高機能の最上位機種を投入することで「〝こんなこともできる〟と家庭用ミシンのイメージを刷新し、一過性のブームで終わらせず、定着させていきたい」(安井宏一取締役)という狙いだ。
ルミナイアーXP1はプロジェクターを搭載し、刺繍前の布地に図柄を投影する。そのため、刺繍の位置や完成イメージを刺繍する前に確認することができる。さらに、操作画面もプロジェクターで布地に映し出し、タッチペンで触ることで操作できるので、ユーザーは視線を布地から移動することなく刺繍ができる。
182のディズニー・デザインを含む約1300種の内蔵刺繍データ以外に、パソコンから無線LANで転送できるほか、本体のカメラで手描きのイラストなどをスキャンすることでも刺繍データを作成する。パソコンがなくてもオリジナルの刺繍ができるのも特徴の一つ。
本体には10.11インチの大型液晶パネルを搭載し、タッチ操作だけでなく、スワイプやスクロールといったタブレット端末で使い慣れた操作にも対応している。刺繍サイズは40.8×27.2センチ。キルトやハイクオリティーな作品作りを目指している上級者向けに、年間20台の販売を目標にしている。
国内の家庭用ミシン市場は、少子化やファストファッションなどによる低価格の既製品の広がりで、「この10年で25%縮小」。製品のラインナップやSNS、コンテンツサイトの整備など「リーディングカンパニーとして新しい需要の創出に取り組んできたが、昨年まで厳しい環境にあった」という。
それが今年2月ごろから一転し、手作りマスクブームで、同社のマスクの型紙と作り方のサイトへのアクセスが「一挙に前年の1000倍」に跳ね上がり、その後はマスク以外の手作り製品の型紙やレシピにも広がった。家庭で過ごす時間が増え、縫製だけでなく刺繍も楽しもうというユーザーが増え、刺繍データを取得するための登録者は1.7倍に増加した。同社では「他社も含めた家庭用ミシン市場は今年1.8倍に拡大した」と話している。