アトレ上野 近隣施設来場者取り込み、過去最高の売上

2018/08/28 06:27 更新


 JR上野駅の駅ビル、アトレ上野(地下1階~地上2階)は上野動物園や美術館など近隣施設の来場者を取り込む施策をテナントと連携して強化し、成果を上げている。18年3月期売上高は全61店で、127億3900万円(前期比2%増)。02年の開業以降最高額となった。

 今期は食物販4店の休業と桜開花のピークが3月に早まり、4月の花見客と来館者が減った影響などで8月までで前年同期比微減。ただし、「秋に近隣の美術館で大型展覧会が目白押しで、来街者のさらなる増加が期待できる」ことから、今後盛り返し、通期で前期並み以上を目指す。

(有井学)

 以前は販促の重点がポイントカード会員向け主体だったが、近隣の施設にインバウンド(訪日外国人)を中心に観光客が増えていることを踏まえ、16年度から「幅広い来街者を取り込む」施策主体に切り替えた。美術館の半券チケット持参客への特典サービスを強化したほか、近隣施設のイベント情報発信を本格化したり、桜やパンダなどの巨大オブジェを駅コンコースに掲出するなど「上野の魅力を伝え、来街者に楽しんでもらう」企画を拡大した。半券チケットサービス以外でも近隣施設との協業企画を強化し、限定メニューや限定商品の販売を積極化した。

パンダのオブジェを飾るなど「来街者に楽しんでもらう」企画を強めている

 この成果で16年度の売り上げは順調だった。前期は上野動物園で赤ちゃんパンダ「シャンシャン」が誕生し、美術館の大型展覧会がヒットして来街者が増え、関連した販促を実施した結果、過去最高売上高の更新につながった。カフェや飲食、食物販のほか、パンダモチーフの雑貨が好調だった。

 衣料品も「きめ細かなVMDの変化などで来街者を取り込んだ店舗が好調」で、前期は全体で売り上げを伸ばした。今期は衣料品売り上げがやや苦戦しているものの、前期とほぼ同様の傾向。雑貨はギフト需要をつかんでいる「アフタヌーンティー・リビング」やインバウンドを取り込んでいる「ジンズ」などが順調だ。

 店長会などテナントとの日々のコミュニケーションを通じて「館の中心ターゲットが来街者であることが各店に浸透し、店ごとに需要獲得のための工夫を重ね、成果が出ている」とする。「街を店舗スタッフが知り、接客などに役立てる」ため、近隣施設の見学や上野エリアに関する講習も定期的に実施。7月には鹿児島県のNPO(非営利組織)による西郷隆盛に関する講習を行った。「西郷の人柄や食の好みなどが話の中心で、飲食店での関連メニュー開発のきっかけになれば」という。

 今後も前期から開始したLINE@とインスタグラムも活用した地域情報の発信、大型展覧会との協業企画、他商業施設と連携した販促を強化し、エリア全体と館を活性化する。



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