大倉加奈子さんがプロデュースする長身女性のためのウェアブランド「ATEYAKA」(アテヤカ)。きものをコンセプトに16年に和テイストのアパレルブランドとしてスタートし、19年秋冬からベーシックなラインを加えた。
(壁田知佳子)
ベーシック商品は、ノーカラーのジャケットやワイドパンツ、クロップトパンツ、ボウタイブラウス、ミモレ丈スカートなど。仕事やお出かけに使えるようなきれいなアイテムを揃える。無地中心に一部チェックも加えた。
すべてサイズオーダーで1カ月~1カ月半で届ける。ジャケット2万9000円から、パンツ2万4000円から。
身長180センチの悩み
最も力を入れたのがコート。長身女性が格好よく着られるロング丈のコートで、顔が小さく見えるよう襟の大きさも工夫した。長身女性から意見を聞き、欲しいと言われた15色を揃えた。6万8000円。
プロデュースする大倉さんは身長180センチ。日本のブランドは普通サイズだけでなく、トールサイズとうたっているものでも袖や裾の丈が足りず、バランス良く着られる服がない。海外のブランドは丈が合うものはあるが、セクシーすぎたり、身幅まで大きかったりと、ぴったりの服を見つけるのは難しかった。
アテヤカのメインターゲットは168センチ以上としている。同じ長身といっても170センチと180センチでは必要な丈が異なるため、すべての服をサイズオーダーで作る。直営オンラインストア(https://ateyakatall.thebase.in/)で販売する。
リケジョから転身
学生時代は理論宇宙物理学を専攻し、「ブラックホールの計算をしていた」という〝リケジョ〟の大倉さん。身長が高いと「スポーツやっているの?」と言われがちだが、「スポーツは苦手だったので、勉強を頑張りました」と笑う。卒業後は外資系コンサルティング企業やゲーム会社でキャリアを積んだ。
外国人と接する中で「日本や日本人であることを誇りたい、日本のすばらしさを世界へ伝えたいという気持ちが強くわいた」という。出産・育休を経て、以前から興味を持っていたという服の事業を開始。きものをコンセプトにしたアテヤカを立ち上げた。
「きものをやっているなら」と知り合いから紹介された「伊勢型紙」と出合い、19年春夏物から柄をプリントやオパール加工したドレスやスカートを作り始めた。長身女性だからこそ映える華やかな服ができた。
「デイリーに着る服にも困っている」という声を受け、19年秋冬物からベーシックラインも開発。新たに177センチのデザイナーも服作りに加わったことで実現した。
同じ悩みを持つ女性のコミュニティー作りにも力を入れ、SNSで呼びかけて東京や名古屋で〝高身長女子会〟を開いている。「170センチの人が、『身長が低いね』と言われる珍しい集まり」と大倉さん。サンプルを180センチで作るのも、「175センチの人が、この服は丈が長すぎる!」というこれまでにない経験をしてもらうため。女子会では共通の悩みや〝あるある〟ネタに花が咲く。ベーシックラインは、インスタグラムで長身女性のコーディネートを紹介する「#のっぽコーデ部」とも協業している。