【トップインタビュー】タキヒヨー 滝一夫社長執行役員

2018/04/24 03:58 更新




 創業から267年の長い歴史の中で常に変革に挑みながら、ファッション企業として発展してきたタキヒヨー。独自の原料やテキスタイルの開発・生産のほか、企画力と生産力を背景にした多くの小売業へのアパレル供給、直営店の展開による小売り事業など、その領域は川上から川下まで及ぶ。激しく変化する時代へと突入したファッション業界に対し、独自のモノ作りやオリジナル商品を企画提案・供給し続けることで次の歴史を紡ぎ始めた。

「意思」のある商品を開発し市場へ 

――主力のアパレル事業をどう進めるか。

 前期(18年2月期)は、これまで当社の強みであったカットソーやニット、ボトムが振るわなかったのが業績に響きましたが、商品の魅力が無かったことが大きな要因だと考えています。現場では、厳しくなるとどうしても受注不足を取り戻すため、低価格で短納期の受注獲得に走り、物流経費増や品質不良に伴うコストの増加などで利益を圧迫させてしまいます。売り上げを作るための無理な受注はやめなければいけません。

 そして、取引先のバイヤーの前年実績などニーズを踏まえながらも、より新しい鮮度ある商品の提案が求められるのです。それは商品の一つひとつにデザイナーをはじめとした作り手の「意思」を込めることです。「商品確認会」を立ち上げ、私自ら商品を見ています。そうすることで社内の意識が変わっていくのを期待していますし、展示会でも成果が出始めています。前年踏襲型ではない、オリジナル性の強い商品の提案という、かつては当たり前にやっていたことに再びチャレンジしています。

 2年前にシェアの拡大を方針として打ち出し、その結果、売り上げ至上主義や薄利多売を招いた面もありました。この点ではブレーキを踏みますが、インテリアやテキスタイル輸出、メンズなどはまだ伸び代があると見ていますから、アクセルを踏み込みます。テキスタイル輸出が伸びているのは差別化ができているからです。オリジナリティーがしっかりしていて、分る人には「はまる」という具合に、商品に意思が入っています。こだわった物作りという方向性は間違ってはいないので、単位は小さくてもこうした事例をいくつも生み出していく必要があります。 

 商品ごとの収益率を分るようにして、中国の生産工場集約も行っています。取り組み先にはしっかり発注を出し、工場に足を運び納期や品質管理を徹底していきます。業績が順調な時は隠れていましたが、モノ作りでは楽をしてはいけないと原点に戻り戒めていきます。

原料や物作りから独自性を

――ファッション市場の今後をどう見るか。

 市場は大きな転換点を迎えていると考えられます。今後、短期的には先ほど述べたことに取り組んでいきます。もう一つ大事なのは長期的な課題です。「偉大な御用聞き」という成功したビジネスモデルを続けていたら、今起きている変化に対応できません。「タキヒヨーのブランド化」を目指す必要があると考えています。

 例えば一宮工場の英式紡績機は300錘でスタートしました。現在は、500錘まで拡大しましたが、受注量がいっぱいでキャパシティーを超えている状況です。縫製子会社の「ティー・エフ・シー」の北陸工場は、高級ブランドのニットを生産していますが、技術力が高く評価されています。自前で生産設備を持つことが重要だと以前から強調してきましたが、長期的な戦略にとってますます大きな意味を持つでしょう。原料や資源を様々なアイテムに落とし込み、商品群として売っていけるかが大事なのです。現在、さらに三つの案件を進めていますが、具体化するまでには2年くらいはかかるとみています。このようなことが、タキヒヨーのブランド化に繋がると考えています。

英式紡機でオリジナル糸を開発する「一宮工場」

 また、ファッション市場の大きな顧客層である女性、特にシニアは無視できません。当社はこれまでカジュアルや、エレガンスのヤング向けを主に拡販してきましたが、競争が激しく今後は少子高齢化が進んでいきます。マーケットとしてしっかり捉え、シニア向けの商品を開発することは欠かせないでしょう。 

新たな事業の柱を構築へ

――セレクトショップを出店し小売り事業に乗り出した。

 3月、名古屋に「メランジトップ」の1号店をオープンしました。ゴルフブランド「ゾーイ」を核に、イタリアのメンズブランド「ボブ」、同じくイタリアのデニムブランド「ロイロジャース」、シューズの「ウォムシュ」、オランダの帽子・スカーフの「バーツ」などを揃え、上質な大人のファッションを提案しています。ここで育ったブランドを個別展開させることや、売れなければ入れ替えもしていきます。そうした見極めをしながら、2店目、3店目の出店を探ります。

 ゾーイの売上高は前期比20%増と好調でした。引き続き今期も20%増を見込んでいますが、規模はまだ小さいです。製品卸事業を主力としてきた当社にとって、新たな柱の育成を目指すチャレンジでもあります。

3月にオープンしたセレクトショップの「メランジトップ名古屋店」
上質な大人のゴルフウェアの「ZOY」(ゾーイ)

 なお、ファッションテックの分野も広がりの勢いはすごく、外せません。AI(人工知能)やVR(仮想現実)などを基幹システムや企画系ソフトと連動させることも検討中です。必要な投資を行い、できるところからスタートしたいと考えています。

Profile

1960年生まれ、1990年タキヒヨー入社、2001年百貨店事業部副事業部長、

2003年執行役員テキスタイル事業部副事業部長、2004年取締役テキスタイル事業部長、

2008年常務取締役テキスタイル事業部長、2010年常務取締役営業部門副統括兼貿易部・AKNYブランド・テキスタイル営業部・テキスタイル企画開発室管掌を歴任、2011年3月より現職。

【URL】https://www.takihyo.co.jp/

【住所】〒451-8688 愛知県名古屋市西区牛島町6番1号 名古屋ルーセントタワー 22、23、24F

(繊研新聞本紙4月23日付け)




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