21年春夏ミラノ・デジタル・メンズコレクション ミニマルでインダストリアルなムード=プラダ

2020/07/22 11:00 更新


 ロンドン、パリに続いてミラノでもデジタル形式で21年春夏メンズコレクションを開催した。パリに比べると規模は43ブランドとそれほど大きくなく、実際に服を見せたブランドも多くはない。しかし、中には少人数ながら観客を招いてフィジカルなショーを行い、それをデジタル配信したブランドもある。

(小笠原拓郎)

【関連記事】ドルチェ&ガッバーナ 観客を伴うショーを開催

 21年春夏ミラノ・デジタル・メンズコレクションの注目ブランドはなんといっても、プラダ、グッチといったビッグブランドだ。しかし見せ方はくっきりと対照的なものとなった。

 プラダは、5人のアーティストとともにそれぞれの解釈による映像を見せた。その演出の評価はそれぞれであろうが、デジタル映像から伝わってきたのは、シンプリシティーやミニマルといった服の在り方だ。プラダらしい端正なスーツやジャケット、その中にはボックスシルエットのショート丈といったものも含まれる。凛(りん)としたムードを象徴するのはそうしたアウターと合わせる白いシャツ。そんなミニマルなラインと同時に、どこかインダストリアルなムードもある。工業製品、プロダクツとしての服ということも同時に感じさせる映像が続く。

 ファッション消費をあおる扇情的な映像とは異なる、どこか内省的なムードも感じさせる。映像を見ながらそんなことを考えるが、残念ながらそれ以上のことは伝わってこない。やはりこのデジタル配信で、映像としての面白さと服へのフォーカスを同時に行うことは難しい。

プラダ
プラダ
プラダ

 グッチはプラダと異なり、モデルの歩く映像は皆無だった。デジタル配信の日に送られてきたのはオーガニックな野菜のセット。この野菜たちがどんな風にコレクションとリンクするのかを楽しみにしていたのだが、結果的にはルックの静止画とともに野菜が映し出されるという内容だった。静止画でのルックの説明とともに、モデルたちの撮影準備の映像をライブストリーミングで流した。2月のフィジカルのコレクションで見せた、ショーの背景や舞台裏を違う形式でみせるという演出だ。しかし、フィジカルのショーで輝いた舞台裏を見せるという演出も、デジタル配信としては盛り上がりに欠けて厳しい。送られてきたルックブックの写真からは、アレッサンドロ・ミケーレらしいジェンダーを超えたグッチスタイルを感じることはできるのだが。このデジタルファッションウィークを経て、デザイナーたちはデジタルでできることとフィジカルの持つ力を再認識することになるのであろう。

グッチ
グッチ

 エルメネジルド・ゼニアは、織物工場としてのオリジンと自然を背景にした映像を見せた。モデルたちが新作をまとって、森の豊かな緑の中や織物工場の静かな織機の合間を歩く映像だ。アイテムで気になるのはゼニアらしいテーラードスーツとともに、ハーフパンツや大きなポケットのシャツなど。大きなフロントポケットを強調したユーティリティーを感じさせるアイテムが目立つ。

エルメネジルド・ゼニア

 エトロは、オーケストラの生演奏に乗せて、ホテルの庭園を使ったショーをした。ストライプやマドラスチェック、ペーズリーモチーフを、シャツや軽やかなスーツにのせた。フローラルのカムフラージュ柄がエフォートレスなムードを作る。

エトロ


この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事