19年春夏パリコレ 性差を巡る表現に改めて脚光

2018/09/28 06:30 更新


 【パリ=小笠原拓郎、青木規子】19年春夏パリ・コレクションは、ロンドンからパリへと発表の場を移した注目株やデザイナーを代えて再出発するブランドのコレクションが相次いだ。新陳代謝の激しいパリ・コレクションで常連になれるかどうかは、オリジナルの強さを見せられるかどうかにかかっている。

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 ジョン・ガリアーノによるメゾン・マルジェラは6月のメンズに続き、アンドロジナスなムードをたたえたコレクションを見せた。男と女、トランスジェンダー、様々なモデルがクロスジェンダーで服を着る。自由なエネルギーと、そのコーディネートが持つ新鮮な魅力を改めて感じさせる。雑誌のLGBT(性的少数者)への差別的な記事が話題となる日本と比べると、あまりにも当たり前に存在するアンドロジナスなムード。それは当たり前の存在であるだけでなく、アンドロジナスなスタイルだからこそ持つパワーにあふれたものとなった。男性が女性の服を着る、あるいはその逆。最初は、わずかの違和感を感じているのだが、しだいにそれはどうでもよく思えてくる。そこにあるたたずまいの美しさとエネルギーに意識が向かうからだ。

 ヘリンボーンをはじめとするダークカラーの生地にスラッシュとステッチ、タックの量感だけでフォルムを形成する。その技術の高さに驚かされる。ケープにスラッシュでショルダーを作り、ステッチで襟を作ってトロンプルイユのテーラードジャケットに。トレンチコートはスラッシュの隙間からセーターを通してインナーがアウターの中に混じり合う。メンズテーラーリングの構築的なジャケットにエナメルのレギンスで見せるアンドロジナスなムードが鮮やかなコントラストとなってはじける。

メゾン・マルジェラ
メゾン・マルジェラ

 艶やかなサテンのスーツは、ダブルの合わせからたっぷりの量感をはらむシルエット。それをまとうのが女性なのか男性なのか。いずれにせよ、そのカットとボリュームを艶やかな生地が彩る。今、80年代に象徴されるアンドロジナスなムードが再び焦点となっている。

メゾン・マルジェラ

 PVC(ポリ塩化ビニル)のケミカルなフリンジ、ストライプに重なるぼやけたフラワーパターン。ドリス・ヴァン・ノッテンはモノクロと鮮やかな色が交錯するコレクション。モノクロの花プリントのスカートをイエローの刺繍が彩り、白いシャツアウターのヨークからブルーのビーズ刺繍がささやくように揺れる。ケミカルなグリーンやイエローのフリンジ、グラフィカルなキャンディーストライプ、手描きのオーバーペイント、小花柄。様々な色と柄がコントラストを作り、重なりあって陰影を作る。

 アノラックやパーカのワークウェアが、ハンドクラフトのクチュールテクニックとシンクロする。香水をメイン事業とするスペインのプーチグループ傘下に入って初のレディスコレクションだったが、その内容はいかにもドリスらしい色柄のミックスとアイテムバランスにたけたクリエイション。

ドリス・ヴァン・ノッテン

(写真=大原広和)

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