【ニューヨーク=小笠原拓郎】18~19年秋冬ニューヨーク・コレクションは、ブランドのオリジンや技術を再度考えさせられるコレクションが相次いでいる。アメリカンカルチャーとそれを背景にしたスタイルや上質な物作り。そこに立ち返ったブランドが脚光を浴びている。こうしたクリエイションで、ともすると「ヨーロッパの後追い」のように思われてきたニューヨークのイメージを払拭(ふっしょく)できるかが問われている。(写真=catwalking.com)
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18~19年秋冬NYコレ「カルバン・クライン205W39NYC」
カルバン・クライン205W39NYCからのインビテーションはポップコーンの入った袋、そこに名前とシートナンバーが書かれている。ショー会場に足を踏み入れると、床いっぱいにポップコーンが敷き詰められている。靴が埋まってしまうほどのポップコーンの中を歩くモデルたちが着るのは、ワークウェアを背景にしたレイヤードスタイルだ。
ニューヨークを代表する花形職業といえば、消防士を思い出す人も多いだろう。リフレクターの付いたジャンプスーツやコート、耐火服を思わせるシルバーのドレスやグローブ、ニットの頭巾も消防士がヘルメットの下に身に着けるマスクを思い出させる。サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」やママス&パパスの「カリフォルニア・ドリーミング」といった懐かしいアメリカンポップスとともに、消防士のアイテムがビッグサイズのアイテムと重ね着される。テーラードコートは肩が大きく張り出し、モスリンタッチのコットンドレスは大きな襟とフリルがスイートなムード。しかし、それが消防ルックのワークウェアと重なると、不思議なパワーで迫ってくる。アメリカンキルトのような布やバファローチェックのジャンパースカートなど、他にもアメリカを背景にした要素が散りばめられている。確かに大きな肩もダウンベストの重ね着も、アメリカの人たちの大好きなもの。それは時に過剰に見える場合もあるのだが、ラフ・シモンズの巧みなレイヤードでスマートで時流に合ったものに見えてくる。
この間、常にアメリカからの要素を取り入れたクリエイションを続けている。カルバン・クラインというアメリカを代表するブランドを再解釈する以上、それも当たり前なのかもしれない。ただ、そのクリエイションの面白さが、ビジネスにどう響いているのかが気になるところ。アメリカのコンテンポラリー市場を軸にしていたビジネスが、クリエイションの変化でどう再定義されるのか。現状ではまだラグジュアリーのブランドイメージにまでたどり着いていないだけに、リブランディングの成否がかかっている。



