勝ち抜く方法を考えるー鈴木陸三氏語る

2014/01/06 16:27 更新


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過密市場で拓くファッションビジネスの未来―2014年1月1日付繊研新聞紙面より

 安く、手軽にファッションが手に入る時代になっているってこと自体は悪いことじゃない。今、これだけ市場にモノがあふれている現状も僕は必然だと思う。日本の消費者はクオリティー志向がとても強い。選択肢は増えるのが当たり前。日本の市場は我々にとっては宝ですよ。

 競合は厳しくなるし、企業間で優勝劣敗の構図が起こるのも当然。プレーヤーである企業は、その中でどうやって勝ち抜くか、全力を挙げて考えていくべきでしょう。僕が会社で敷いたフレーム(規範)は、「無理しちゃいけない」「天狗にならない」「前向きに行動する」「自分の持ち場でスターになる」。これができれば、消費者や市場の変化に応じた提案ができると思います。

"プロとしての背骨がなかった。だったら、手ごわい消費者でいよう、と思った"

 72年に創業したのですが、何をやったかというと、僕自身、会社勤めを経ずにいきなり起業したものですから、職業体験、つまりプロとしての背骨がない。だったら手ごわい消費者でいようぜってことで、ビジネスを考えたんです。市場にこれはまだないな、という新しい価値観を色々試し、タテに深めるのでなくヨコに広げる、ということをやってきた。

 1981年、「アフタヌーンティー」の1号店を作った当時、食器などの生活雑貨は高いブランド品と安いものの二つだけで、ちょっと小じゃれた、手が届く値段のモノがなかった。生活に潤いをもたらすデザインと機能があって、それでいて手の届く値段のモノ、これを売る店を作ろうと思った。

 商品作り、仕入れ、店の内装も自前で、従業員にはとにかく「お客さんに売り込まない、ゆっくり見てもらう」を徹底した。カフェを併設して、何も買わなくてもそこで時間を過ごすために人がやってくる。それまでなかったやり方を自前で作り上げた。

 店は情報発信の役目も担った。店の壁にマチスの絵をかけたんです。当時、店はモノを買いに来る場所。でもウチに来るとお客さんは、あ、これはこういう置き方をするのか、こう使うのか、と商品を生活になじませるヒントを見つけることができた。当時はそれが新鮮だったのか、これは当たりました。

 その様子を見て気に入り、一緒にやろうとなって始まったのが「アニエスベー」です。肩の力を抜いて自然体で楽しめる雑貨と飲食、それから服まで、一気通貫で扱うようになったのが80~90年代。時代と仲間に恵まれたとも思うし、戦略ありきだったわけでもないですが、市場に「これはないな」を見つけ、ヨコに広げる。生活者に半歩先のライフスタイルを提案するビジネスを形にしたのは当社だったと思います。

"ファッションとは人の嗜好性の変化、固執せず、浮遊しないと『次』は見えない"

 ファッションは、日本では服そのものを指すことが多いけど、本来は時代や人の嗜好性の変化。服も、食べ物も、生活者がやりたいこと全部の変化のことです。だからファッションビジネスは、金鉱を一つ掘り当てたとしても、油断してはいけない。一つのことに固執してはだめ。次を見つけるには浮遊していることが大事なんです。

 ブランドは一過性なんです。短く終わるものと長く続くものがあるだけ。そのことは絶えず付いて回る。だから時代の変化に敏感であるべきです。ネットが発達してお客さんの買い方が変わった、店に来なくなった、なんて言われますが、ほんの少し、自分のできる範囲で背伸びしたい、楽しみたいって気持ちを持っている人はちゃんといます。

 我々が目指してきたのは未知の領域に挑戦することです。成功も失敗も重ねてきていますが、その分、次にどういうものを、どんな風に市場に提供すればいいか、分かっているつもりです。今、市場にあるのと、ちょっと違うモノやコトを、前向きな普通の生活者、セミマジョリティーにどうやって発信していくか。

 当社の現在の取り組みでいうと「ロンハーマン」。自然体で健康的なLA(ロサンゼルス)のライフスタイルですが、僕の予想を超えて日本の生活者に受け入れられた。店には格好いい、若いお客さんが来て下さる。その対比では「フライング・タイガー・コペンハーゲン」も100円均一ショップとかとは違って、安いだけじゃなくて、楽しい。ワクワク感を提案している。

 サザビーリーグのこれまでを振り返ると、ひいき目にいって10勝5敗、シビアにいって9勝6敗でしょう。商売は勝ち越さなきゃ負けが取り返せない。全勝とは行かなくても9勝か10勝すること。それできるから「次」を創造する力が出せる。代表権はもう返上していて、僕の立ち位置は厳しい傍観者なわけですけど、今また、サザビーリーグは新しい波をつかみつつある、と感じています。

鈴木陸三(すずき・りくぞう) 1943年、小売業を営む家に三男として生まれる。1969年、ロンドンにわたり、大学に通うかたわら、ヨーロッパの文化に触れ、日本にはないライフスタイルの中で過ごす。1972年に帰国後、株式会社サザビー(現サザビーリーグ)を設立。「アフタヌーンティー」「アガット」「サザビー」などのライフスタイルブランドをスタートしたほか、「スターバックス」「ロンハーマン」の事業も日本で根付かせた。現在は取締役会長を務める。

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